59.名古屋の町から日本を見れば
第59話
私は20年近くも歴史を研究し続けているが、これは学校でいい成績をとろうとも、何か役立てようとも思わなかった。ただ好きだからやってきただけなのだ。これくらい長い間歴史をやっていると人の見えないことが見えてくるものだ。「人間はいつまで同じバカやってりゃ気がすむんだ。」
私はいつもこういう。それはいろいろな事件には歴史にその前例がある場合が多いのだ。それに気づかぬ人間は多い。
名古屋を見ればそれが実によくわかる。
たとえば、名古屋の町にはほかの日本のどこにもその例を見ない文化や風習が存在している。ある意味ではよそと違う独自の文化を築かないとだめだということなのだ。たとえば「きしめん」名古屋のほかにうまい「きしめん」がある町が日本のどこにある?しかもいい店はさらに努力を怠らず、サラダのようにきしめんの上に野菜を載せてゴマ酢しょうゆをかけて食べたりする。
東京から見た名古屋は実に不思議な文化の町だと思うだろう。だが、それはそのまま世界から見た日本に直結する。かつて日本は中国の文化を盛んに取り入れていたが、ほかの国と違い、独自に受け入れ、調整していた。
だから周辺の国々が中国とともに衰退しても、日本は独自に文化を栄えさせることができた。これこそが戦後日本の工業のアイデンテティにつながり、
工業立国日本を支えてきたのだ。
名古屋を見れば日本そのものの姿が見えてくる。名古屋の町の人々は
自分たちの文化は守ろうとするが、よその新しい文化はなかなか受け入れようとしない。日本もかくの如しである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます