57.トヨタ、その限りない可能性への挑戦(3)

第57話

実はトヨタの食料品製造はずっと以前からあった。喜一郎氏がトヨタ自動車の社長を辞任した頃、喜一郎氏は食料品製造や建築資材の製造の仕事に手をつけていた。その利益を元にトヨタとは別の自動車会社の立ち上げまで画策していたのである。建築は後に「トヨタホーム」となった。

トヨタというとどうしても自動車製造のイメージがつきまとうが、自動車のほか、織機、合成製品、建築、商社、金融、不動産などあらゆる会社がある。

トヨタの最大の功績は外国産に頼っていた工業を国産に移行させたことにある。

いくら優れていても、いつまでも生産を外国に頼っていて日本の発展はありえない。むろん、私は貿易の発展は否定しない、日本は資源のない国であってみれば、材料はいくらでも輸入に頼ってかまわない。

しかし、材料の加工、工夫、政策、製造工程に至るまでは日本で、

日本人の手で行わねばならない。さもなければ、日本はいつまでたっても

後進国の位置に甘んじることになる。これがトヨタが最も恐れることであり、

日本を支える製造業の衰退、ひいては日本の衰退を意味する。

製品は全世界に輸出する。日本の工業製品が世界で名声を獲得するには

実に多くの苦労の積み重ねがあった。また、多くの下請けの町工場の苦労と

努力があって、日本の工業製品の名声があることも忘れてはならない。

その影には苦しんだ名も無き人々の血と汗があるのだ。

今でも日本に来る多くの外国人がカメラや電化製品を買って帰っていく。

秋葉原にも周りを見渡せば免税店の看板があるだろう。名古屋にも港の近くにはいくつかの免税店がある。車に至っては密輸までして持ち出す事件が後を絶たないが、それだけ日本車をほしがる人がいて、性能がいいことの現われなのだ。

なお、街中にある免税店ではわれわれ日本人も買い物ができる。ではどうして免税になるかというと、店では外国人であるとないとを問わず、消費税込みの

価格で商品を売る。このとき外国人はパスポートを示して免税書類にサインする。その書類を日本を出国するときの税関に提出すると、後日、本人宛に

消費税分の金額の小切手が郵送されてくる。ヨーロッパの国と同じ方式だ。

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