53.そばが教える日本の危機(前)

第53話

私は東京へ帰ると、必ずそばを口にするほど、そばが好きだ。

ことに小田急が経営する「箱根そば」は、見ると必ず入るほど好きだった。

幼い頃から入った店は、優に10を超えた。新宿、地下、向ヶ丘、鶴川、

町田駅、ツインパル、本厚木ミロード、箱根湯本本陣、と、最近は店で

ビン入りつゆを名古屋へ持って帰るほどだ。

これは、名古屋のつゆは辛くて私には合わないからだ。

つゆは薄めて使うものというのが東京の常識だが、名古屋ではほとんどが

薄めず使う「ストレートつゆ」である。

これが2001年の東海豪雨のとき大きな力を発揮した。

あの時は我が家の回りも冠水してしまい、電気、電話、水道がストップした。

コンビニも大半が休業したから、ご飯を炊くことすらままならなかった。

そのときあったのがアルミのなべに入った鍋焼きうどん。ストレートつゆをかけてカセットコンロにかければ食べられたのだ。

前日は休日だったから、名古屋駅に行ったが、あの時は激しい雨でもそんなにひどいとは思わなかった。名古屋は地下街が発達しているから、雨だろうが

買い物に出かける人は多い。が、JR関西線と近鉄線が止まっていることを知って「これはただ事ではない」と急いで食料を買い揃えて帰宅した。

近鉄は何度も乗っていて沿線見ていて知ってるが、見ていて危ないようなところが見当たらない上、輸送量も多かったから、近鉄が止まること自体が

非常事態だと察知したのだ。

ところで、日本で消費されているそばの89%が輸入に頼っていると知ったら

みんなはどう思うだろう。現実は駅や町で出てくるそばの大半は輸入物だと思っていい。「国産そば粉」と看板がかかっていたらまず疑ってかかることだ。

もちろん輸入物でも栄養や味に変化があるわけではないが。

私は父の別荘がある関係で、10年前から長野へたびたび行っているが、

長野県内各地ではもちろんおいしいそばはいただいた。ところが、おいしいそばは確かに各地にあったが、そばの畑を自分の目で見たことは一度も無かった。

後に、オーストラリアで日本そばの店というのがあったので入ってみたが、

天ぷらそばとおにぎり二個を頼んだだけで当時のレートで2000円以上取られた。びっくりしたものだ。

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