46.海苔と浅草

第46話

もともと江戸は低湿地帯で、10000年前までは海だった。

海の中に生える海草の中で、重宝されたのがのりである。

のりといっても、白鳥のえさに使うふくろのりや、お好み焼きなどの

上にかける青海苔などがあるが、なかでも「アマノリ」は重宝された。

江戸初期、浅草でこの赤くてひらひらした海苔を栽培し、きざんで

すのこの上に重ねて干す。これが「あさくさのり」だ。

現在では有明海のものが広く出回っているが、浅草ののりの復権を訴えたい。

浅草といえば観音様だ。その歴史は私でもはっきりわからぬほど古いが、

室町時代に浅草寺におまいりした日記が残っていることから、少なくとも

大田道灌の時代にはあった。名古屋にも大須という浅草そっくりの町がある。

ここは観音様からアメ横までが東京と同じにそろっている。

さて、その浅草と上野を結ぶ日本初の地下鉄が昭和2年開通した。

現在の銀座線である。この地下鉄には現在では当たり前だが、当時としては画期的な施設が備わっていた。ATS自動列車停止装置、自動ドア、全金属製車両を装備。自動改札装置も装備していた。当時の自動改札装置は十銭銀貨を

料金箱に入れると自動的に腕木が開いて入場できた。

地下鉄を降りると上野駅だが、外見だけは戦前から変わっていない。

中身は新幹線などで大きく様変わりした。

ここではよく「冷凍みかん」を持って北へ行くのが慣わしだった。

今では見かけることも少ないが、かつて夜行列車が全盛だった時代、

上野で冷凍みかんを買うと、東北につく頃には解けていてちょうど食べごろになっている。みかんは北の国では貴重品だった。

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