11.ロマンスカー物語

第11話

一昔前までのロマンスカーにはゆりの花があしらわれていた。

ゆりは神奈川県花だ、実際ロマンスカーの停車駅で東京都内にある駅は新宿と町田だけだ。

私の小さいころは、コンピューター座席予約などというものはなく、新宿駅の自動販売機で座席番号が印刷された硬券を買っていた。今なら自動販売機はおつりが出て当たり前だが、当時は100円玉3枚と10円玉1枚をきっちり入れないとだめだった。外国の自動販売機はどこの国でも決められた硬貨をきっちり入れないと品物は出てこない。

オーストラリアの切手自動販売機は皿の上に硬貨を二枚置いて、皿を収納させると切手が出てくるものだ。シンガポールのジュース自販機もおつりは出なかった。

昭和の時代、日没を過ぎると小田原へ行くロマンスカーはなかった。切符は大体10時ごろから売っていたから、新宿駅に着くと切符を買い、コンサートに行って終わればロマンスカーに乗っていた。

鉄道マニアなら一度はあこがれる「走る喫茶室」ロマンスカーの車内では紅茶を始め、さまざまな飲み物と軽食を席まで運んでくれた。今ではグリーン車でしか味わえないが、私は現在でもそれを味わいたくてグリーン車に乗る。四半世紀にわたってつきあってきたんだから。車窓から見る駅、一つ一つに思い出がある。

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