藤子先生の地球儀

第42話

私は先ごろ川崎市の「藤子・F・不二雄ミュージアム」へ行った。

ここでは貴重な原画とキャラクターたちが所狭しと展示されていたが、

私が目を止めたのは、生前の藤子先生の仕事場を再現した「先生の部屋」だった。

先生の机の上に一個の地球儀が置かれていた。

この地球儀には見覚えがあった。なぜなら私がかつて同型の地球儀を持っており、

これを制作したのもリーダーズダイジェストであった。

なぜこの地球儀を藤子先生が持っていたのか不思議だったが、

少なくともこの時期のリーダーズダイジェストは定期購読制になっており

定期購読者でなければ手に入るはずのない地球儀だった。

しかもリーダーズダイジェストの誌面内容からいったら到底藤子先生とは結びつかない。

リーダーズダイジェストがドラえもんを紹介するはずがないし、藤子先生がエッセイを寄稿したという記録もない、

第一にリーダーズダイジェストは他の雑誌の記事の要約を転載するのが創刊時からの方針だからすぐ訴えられるはずである。

大赤字のリーダーズダイジェストが人気漫画家に払えるだけの原稿料を用意できるはずもない。

いったいどうしてと私は不思議を感じずにはいられなかったが、リーダーズダイジェストの地球儀があるということは

少なくとも藤子先生の足元にまでリーダーズダイジェストの毒牙が迫っていたことになる。

もちろん赤字のリーダーズダイジェストが資金を提供して陰謀などということは考えにくい。

しかしウォレス夫妻の在世当時であれば、リーダーズダイジェストは何らかの形で日本征服を狙っていたと思われる。

日本通のウォレス夫妻のことだから、何らかの形で日本を征服する、そのためにはマンガは格好の商材であり宣伝手段であっただろう。

藤子先生の性格からいえばこのような陰謀には乗るはずがない、しかし危険が迫っていたことは地球儀が証明している。

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