持ち込まれた投資話
第37話
あれは2007年のころだったか、ある貿易会社からこんな相談があった。
「リーダーズダイジェストのオーストラリアの現地法人が、通信販売業を日本で展開しようと業者探しをしている。オーストラリア大使館から会ってやってくれと連絡が入った」
「で、会いに行ったのか?」
「行って話を聞いてみたら、リーダーズダイジェスト復刊などという考えはなく、
同社の本の日本語訳本を日本で売って儲けられないかという怪しい話だった」
「確かに怪しいな。リーダーズダイジェストという会社が日本市場に再進出するのに、
オーストラリアだ、他の通販会社だという、回りくどいチャネルを利用するはずがない。
さんざん市場調査やテストを重ねた上で、可能性が確かめられれば、
正攻法で再進出してくるはずだ。ところがそんな話は聞かない」
「どう考えても怪しいだろう」
「どうもこれは、リーダーズダイジェストのブランドが責任を持てるようなものではないような気がする」
数日後に、セシール社との提携が発表された。
「懸賞つきで何かの商品を売ろうとしているのでしょうが、通信販売にのめりこんでつぶれた日本のリーダーズダイジェストが、ぜったいやってはいかん道です」
明らかにこれは豪州リーダーズダイジェストが米国本社の許可を得ずに日本へ進出したということだろう。竹橋時代の負債が大きすぎて米国本社はこれに懲りて二度と日本に進出しないという腹を固めていたのですがそれにつけても日本は魅力的な市場、そこで豪州支社は米国本社の判断では絶対に日本市場に参入する許可など下りない、そこで豪州支社は独自の判断で日本進出をたくらみます。しかしコネも何もない。ここで出てきたのがH氏である。どういうルートを使ったのかわからないが、H氏の手下がリーダーズダイジェスト豪州支社に接触した。そして彼の言うままペテンにかけて、セシールとの提携に成功したのだ。
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