第三種郵便の怪

第33話

ハッピーネットワークは95年に第三種郵便の認可を得ているが、これも活動費の節約が目的だった。というのは、当時から相当経費切りつめを狙っていたのである。それほど活動費に窮していたらしい。だがこれは相当無理のあるものだった。当時第三種の認可を得るため、入金を郵便振替に限定したり、同一人物が異なる名義でいくつも会員申込みをしたなどという証言がいくつも寄せられている。なお、この行為はかつて新聞勧誘において行われた「押し紙」という行為で現在は法律で禁止されている。

さて、現在のハッピーネットワークの活動は、およそ第三種郵便物に値するものではない。第三種郵便として認可を受けるためには次のような条件が存在する。

(郵便法第22条第3項)

1.毎年一回以上の回数で年4回以上、号を追つて定期に発行するものであること。

2.掲載事項の性質上発行の終期を予定し得ないものであること。

3.政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又は論議することを目的とし、あまねく発売されるものであること。

このうち、1と2については議論の余地はない。そして、3の「公共的な事項を報道し」という条件に基づいて、紙面の過半が広告で占められているものも認可の対象外となる。ハッピーネットワークは会員から掲載料を取って作品をのせるのだから、広告といってもいい。

さらに、3の定義条件として、具体的に認可されない条件は次のとおりである

・500部未満の発行部数しかないもの

・発行部数のうち販売される分が80%に満たないもの

・定価がないもの、形式的に定価があっても販売された形跡がないもの

・会員限定など、誰もが入手できるわけではないもの

・個人、団体が買い取って、第三者に無償配布されるものについても認可の対象とはならない。

この条件についてみてみよう。まずハッピーネットワークは主宰者の発表でも会員は230名しかいない。実数はもっと少ないだろう。当然500部など発行できるはずがない。次に販売される分だが、この条件では最低でも発売される分は400部以上であることが必要となるが、230名の会員しかいない現状では一人が2部取らない限りこの条件を満たすことは難しい。

定価については、一応一冊900円という定価表示はあるのだが、実際は書店で売られるわけではないので定価で販売された形跡はない。あるとすれば会員に定価で販売したという主張もできるだろうが購読料を会費に含めている現状ではそういった主張もしにくいだろう。さらに会員限定など誰もが入手できるわけではないものという条項は、まさにハッピーネットワークが第三種郵便を使えなくなる根拠だ。ハッピーネットワークは会員制の投稿誌で、会員以外の入手は後述の会員からの紹介を除いては不可能に近い。また過去にはたびたびH氏の判断で購読拒否という事態が起こっている。

これを見ても会員制をとる雑誌では第三種郵便の性質になじまないのだ。

だからこそリーダーズダイジェストは定期購読制にしてからも、ほとんどの場合購読料を受け付けたら発送を拒否することはせず、わずかではあるが書店売りも残した。このためあまねく発売されるという条件を満たした。MY詩集も基本は書店売りである。

逆に通販会社のカタログは第三者郵便ではなく冊子小包(ゆうメール)か、宅配便のメール便で送られる。今や郵便より宅配便の方が安いことすらある。最後の条件もハッピーネットワークに当てはまる。個人団体が買い取って第三者に配布するというのはMY詩集でもあったが、ハッピーネットワークは頻繁に行っている。


(2021年3月の追記)

そしてMY詩集は2014年末に書店での取り扱いと第三種郵便の取り扱いが終了し、以降は個人発行の体裁をとることになる。

ハッピーネットワークは遅くとも2018年にまでには第三種郵便の取り扱いが終了したが、この時点で第三種郵便にするメリットはなかった。

というのは、すでに当時はメール便が普及し、第三種郵便の料金に迫る勢いであった。但し発送にも手間や料金がかかるので

障害者用低料第三種郵便の仕組みを悪用した事件まで起きている。

(ただし、この時の事件に関与した会社は全てその後5年たたずして別の不祥事を起こし別の企業に吸収されるというのも皮肉であった)

そして2023年に廃刊予定となると、この時点でハッピーネットワークは郵便法第22条第3項第2号「掲載事項の性質上発行の終期を予定し得ないものであること」

という条件を満たさなくなるため、郵便法第25条の規定により第三種郵便の認可を取り消される。今後第三種郵便の認可を受けることはない。

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