H氏との会見
第32話
1997年に私はH氏と初めて会見した。
私は身分を隠して訪問したが、たちまちばれてしまい一騒動になった。実は私は刑務所行きも覚悟の上で行ったのだ。この頃勤めていた会社が経営不振に陥り、私は閑職に異動となっていわば「ショムニ」状態に置かれていた。そんな扱いを受ければやけくそ状態になりどうせ騒ぎを起こすならという気持ちで行った。ところがH氏に会った私は拍子抜けしてしまった。あきれるほどの能天気かつ世間知らずだったからだ。公務員しか経験がなく自分の人生すべてうまくいって挫折を経験したことがなければだれでもそうなるだろう。私のようにエンジニアやっていれば、失敗と改善と効果の確認(PDCAサイクル)の連続で人生アクシデントだらけのようなものだ。だから人生のつらさもわかる。
私が感じたことは「こいつは相手を見て物を言っているのか?」ということだった。H氏は私のことを法律違反だとしかいわないが私は法学部出身で、専攻は刑法各論(犯罪研究)だった。当然その類の研究をしてから行動を起こしている。そうでなければ竹橋のリーダーズダイジェストとなど戦うことはできなかった。
まずH氏は私のことを業務妨害罪と言ったがこの犯罪が成立するためにはH氏がやっている「ハッピーネットワーク」の活動はH氏が行う事業であるという前提がなければならない。趣味を妨害した程度では趣味は業務ではないため業務妨害罪は適用されない。この罪はあくまで生活につながる業務を不当に妨害されるのを防ぐのが目的で趣味活動までを保護するものではないからだ。
ある時H氏は私を音楽や芸術など理解しない無機質な男と言った。ところが私の実家は音楽教室である。しかも私はホセ・カレーラスのコンサートにも母と一緒に行ったことがある。あの時は迫力に圧倒された。音楽や芸術がわからない人物ではない。私が批判しているのはH氏は音楽の才能は確かにある。しかし仲間内で聞かせているので満足するようではミュージシャンとはいえない。やるならプロを目指すべきだ、彼にはその才能はある。さらに彼はその仲間にもほめ言葉を強要する。これでは金正日と同じだ。自分の作品に自信があるなら、発表した作品の評価はそれを鑑賞した人にゆだねなければならない。この点でも彼にはすでに芸術を語る資格そのものすらない。奇しくもリーダーズダイジェストの創業者、デビット・ウォレス氏とH氏は誕生日が3日しか違わない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます