シンガポール亡命計画

第29話

94年ごろから主流派の圧力や締め付けが厳しくなる一方であった。94年暮れからは主流派の連中が私に脅迫状を送り付ける騒ぎに発展した。95年からは勝手に通販会社に私の名をかたって注文することもあった。私は体調を崩し、精神科に通う事態に陥った。だんだん体が苦しくなった私は、日本を飛び出して外国へ亡命することを考え、96年初頭を目標に計画を進めた。95年夏には、亡命先が2か所に絞られた、それはカナダのバンクーバーとシンガポールである。

カナダの場合は距離が遠いうえに入国が厳しいことが分かって、秋からはシンガポールに焦点を絞って準備を進めた。現地の放送局から主流派の非道を訴えるつもりでもあった。

ところが、12月に入り事態は一変する。

ほぼ反主流派を鎮圧したとする主流派が、今度は誰が主流派の主導権を握るかで内紛を起こし始めたのだ。これで主流派の分裂解体が決定的となり地下に潜っていた反主流派の幹部たちが次々とクーデターを起こし、とうとう主流派の幹部たちを解任して自分たちが政権を奪取するにいたったのだ。こうなると、反主流派の幹部の私は亡命どころか新政権幹部として迎えられることになり亡命計画は取り消しとなった。

しかし私は集まった新政権の諸君を見て愕然とした。私の友人だらけだが、考え方や主張がまるで異なる連中が主流派憎しだけで団結して新政権に合流していたのである。反骨精神旺盛で毒舌を振りまく私のことだから

「こんな寄せ集めの連中で政権運営ができるか!また崩壊するわ!」

と言って幹部就任を辞退した。私を呼んだ連中からすればあんたはなんと思い上がりだと言って面白くなかっただろう。しかし私の予言どおりにこの新政権も2年と持たずに自己崩壊してしまう。

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