事前処理

第16話

2月3日の時点で従業員たちは皆解雇されたが、この中には閉鎖に反対する社員33名が残っていた。彼らは当時編集局があったパレスサイドビルの2階にこもっていた。

これに対し米国本社の社長は、ビル管理会社に立ち退きに対して協力を求めることと、損害賠償は一切支払わないので、すべて敷金1億2千万円で処理してほしいとのことだったという。塩谷氏はその頃購読者への返金2億2千万円の工面に奔走していたが最終的には半額以上が踏み倒されたという。

この間にも労組は解雇撤回を叫び、米国本社は撤退とそれに対する法的責任の放棄を求め、双方は一歩も引かなかった。さらに労組は1億円の解決金とボーナス3か月分と退職金に6か月分の上積みを求めたがこれでは交渉がまとまるはずはなかった。

塩谷氏によれば、組合は会社の実情を理解していないはずはなくとてもこんな資金が出ないことは分かっているから米国本社に出させようとしたのだという。

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