リーダーズダイジェスト経営破綻

第15話

1986年2月号をもって、リーダーズダイジェスト日本語版は「無期休刊」となったが、これは事実上「廃刊」も同然であった。あまりにも急激すぎる「店じまい」に編集部員も読者も混乱し、一部の編集部員はパレスサイドビル2階の編集部にこもって占拠を始めた。このため取締役でもあった塩谷氏は、閉鎖準備を行うため別にオフィスを用意したほどである。

そして1986年1月31日、リーダーズダイジェスト日本支社は閉鎖された。このニュースをその夜のNHKニュースで伝えたのは、後の木村太郎アナウンサーであったことは誠に皮肉としか言いようがない。塩谷氏に取材に来るマスコミは偏見が多かったが、ただ一人当時プレジデント社(のちに小学館に吸収)の保坂正康氏は好意的で真実を伝えていたという。私は塩谷氏の目は情勢を判断するには優れていたが、人物については判断が大変狂っていたと言わざるを得ない。後に保坂氏は近現代史評論家となるが、歴史家の私から言わせてもらえば保坂氏の歴史は大変疑わしいものでもある。証言だけを適当に並べておいて、当時の日本だけが悪いという史観に加え靖国神社の存在を否定するのは、先人に対する功績と尊敬を否定することに他ならない。先人の存在と功績の否定は、まさに歴史の否定そのものであり、歴史家を名乗るものが最もやってはならないことである。

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