リーダーズダイジェストアメリカ本部

第4話

次はリーダーズダイジェストアメリカ本部について述べる。

リーダーズダイジェストは元々出版社である。本社はアメリカ合衆国のニューヨーク州プレザントビルという所にある。社屋は古風な木造建築で周囲とよく調和している。そんなたたずまいとは裏腹に社屋の地下は最新のコンピュータ・システムを擁する業務部が占める。一方、1階から上は社長室をはじめ、マーケティング部が占めている。

創業者の名前はデビット・ウォレスである。美術に造詣が深く、コレクションを多数保有する。ウォレス氏はアメリカ出版界の伝説的人物である。身長は1メートル85センチの長身であった。85歳でコロラド河の激流下りを試み、毎朝庭に出て大ナタを振るって薪をつくるほど、超人的な体力と精神力の持ち主という。

リーダーズダイジェスト本社のオフィスの壁には時価数千万ドルのシャガールのオリジナルの絵が飾られていた。

また「日本が好きだ、日本を尊敬している。」とよく言っていた。日本支社社員の待遇が当時としては高給だったのもウオレス氏の意向といわれている。これがのちに日本の出版界を滅ぼす元凶となるのだが、そのいきさつは後に述べる。

またウォレス氏は編集者を優遇した。編集者は長年ビジネス側の人間よりはるかによい待遇を受けていた。これがあとから出てくるがビジネス側が編集者と対立する火種となり、ひいてはリーダーズダイジェスト滅亡の引き金になるのである。

ウォレス氏の思想そのものは理想的ではあったが、ただそれは第二次世界大戦後の世界では徐々に時代遅れとなり、ひいてはそれが社内改革を遅らせ、やがては自滅の道をたどっていった。例を挙げてみれば、リーダーズダイジェストは反共産主義を掲げていたが、いまどき共産主義が人々を幸福にするなどとうたってそれを本気で実行しているのは、この世で最も失敗している国家である北朝鮮だけである。もはや共産主義も冷戦も存在しない時代に楽天的に反共主義などやっている時代ではない。先の見えない不確実性の時代がリーダーズダイジェストを終わらせたと言える。

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