第29話



「……何?」



怪訝に、後ろを振り返る。



ーー美しい人だった。



黒髪に力強い眼差し。



品良く着られた、上品な着物姿。




「不愉快だもの。」


「っっ、」



この場を支配するその人は、私だけを冷たい軽蔑を孕んだ瞳で射抜く。



どうして?



向くられる軽蔑と、増悪に身を震わせる。




「っっ、高崎様っ!」



悲鳴に近い声に、固まっていた人達の時間がゆっくりと動き出す。



良く見れば、その声の主はこのパーティーの主催者の夫人だ。




「高崎……?」



はっと、息を飲む。

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