第2話 scramble

『司令官!何か先駆け兵の入ったところからみるみる眩い光が爆発するように膨らんでいます!身の危険を感じます!一度退避します!ただ!退避が間に合わないかもしれません!応援よろしくお願いします!座標を送っておきます!』


司令官室に入ってくるトランシーバーの音声からは、曹長の声が響いていた。その奥で鳴っているのは、光に呑まれた兵の断末魔や、逃げまどう兵の慟哭か。


『物見櫓監視員!状況を報告しろ!座標は、北緯35度23分57.45秒 東経136度50分32.52秒!そこから何が見える!?巨大な膨張物はあるか!?』


『報告します!目視距離から概算するに、直径ざっと100m!物質分析双眼鏡で検索にかけたところ、あれは、ぶつかったものを遠く弾き飛ばす反射性のバリアです!おそらく現場に小さく見える吹き飛ぶ物体は我々の兵でしょう!』


『了解。では、抗バリア性刺突破壊弾を搭載したスピアイーグルを出発させろ。何か、危険な生物がお出ましだ。』


『司令官!どうやら!国営理化学研究所にて、一研究員が、何らかの独自研究物体を持ち去り、私用に流用した模様です!おそらく、その事件は、その実行犯が関与していると思われます!』


『了解。その物体についてわかる範囲で情報収集をしておいてくれ。早急に対処する。』


そのころ現場では、早くもジェットエンジンを積んだ攻撃機が近づいてくる爆音が鳴り響いていた。


『うわあ、なんだこれは…。』デビットは自分の身から発された膨大なエネルギーに呆気に取られていた。それらは、近くにいる今は亡きリチャードと彼のおかれたその場の恐ろしさに身を震わせているサムを守り、少し離れたところにいた憲兵を吹き飛ばし、住んでいた住居を崩壊した。


見ると、ケージに入っていた生き物はいない。しかし、聡明な少年であるデビットは、即座に何事か気付くことができた。その生命体は、彼と合体しているのだ。


生命体の虹色の全身が、彼の四肢を七色の防具のようなもので保護し、鎧のように頑丈に守っている。


今は、更地になったこの場所で彼だけがその場に立ち、かすかに気のようなものが彼を包んでいた。やがて、航空機が彼に迫ると、彼の身体は、すぐさま、飛行形態に変化する。


『ビシュウ!!!』とものすごい音を立てて、デビットの意思に反して彼は上空高くへあっという間に到達する。高度は50000フィート、目下10000フィート下には敵機、スピアイーグルがいるではないか。


スピアイーグルは、彼を見つけ、上空を睨むようにして、急上昇した。


彼は、それを狙うようにして、弧を描きながら、戦闘機に向かって突撃するのだった。


司令官室では、航空機に乗った者たちのトランシーバーの音声が錯綜する。『うわあああ!!!!なんて速さだああ!!!ぶつかるああ!!ブチッ』最後は音が途切れた。おそらく、一瞬にして撃墜された音だ。


最新技術、バリアを淘汰する超最新武器を搭載したスピアイーグルをもってしても、瞬殺。我々は手立てを考えなければならないと思う、司令官なのであった。

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