第2話
「おー、晴人兄さん、淳、いらっしゃい!荷物運ぶの手伝うよ」
祖母の家の前で迎えてくれたのは、僕の叔父、修おじさんだった。
「おじさん、久しぶり」
「修、久しぶりだな。手伝ってくれてありがとな」
淳たちは修の手伝いを借りて、荷物を家の中に運んでいった。玄関をくぐると、ふんわりと祖母の作る味噌汁の香りが漂ってきた。淳はその香りに誘われるようにキッチンに飛び込むと、そこには祖父と祖母が仲良く料理をしている姿があった。淳が来たことに気づいた祖母は、顔をほころばせて言った。
「まあ、淳!よく来たねぇ」
祖父も笑顔で続けた。
「大きくなったなあ。もう背を抜かされそうだぞ」
「久しぶり、じいちゃん、ばあちゃん!」
そこに父もやってきて、懐かしそうに声をかけた。
「母さん、父さん、久しぶり。体調はどうだ?」
「薬を飲んでいるから、だいぶ元気よ。心配してくれてありがとう。晴人も変わらずで安心したわ。ご飯は7時にするから、それまで待っててね」
淳は時計を見て、まだ2時間あることに気づいた。その時間をどう過ごそうかと考えた末に、少し町を探検してみることに決めた。
「僕、まだ明るいし、町探検してくる!」
「いいけど、あんまり遠くに行くなよ。携帯持って、気をつけてな」
父にそう言われ、淳は携帯と帽子を手に持って家を出た。実はしっかり町を探検するのは初めてだったので、淳は胸を躍らせていた。しかし、いざ歩き出すと、どこへ行こうか悩んでしまった。スーパーに行ってもつまらないし、郵便局ではすることがない。森は危険だし、と考えていたその瞬間、突然少し強めの風が吹いた。帽子がふわりと舞い上がり、目の前の大きなカエデの木に引っかかってしまった。
「あちゃー、こりゃ困ったな。でも、僕にとってはこんな木、お安いもんさ」
自信満々にそう言い、淳はすぐに木に登り始めた。運動神経の良い淳は、ささっと帽子のあるところまでたどり着いた。高い木から見える景色はなかなかのもので、淳はしばらくそこから町を見渡していた。
「意外とこの町って広いんだな......ん?」
その時、淳は森の入り口あたりに、古びた中学校らしき建物を見つけた。人の気配はなく、どうやら廃校のようだった。
「バレたら怒られるかもしれないけど、ちょっと気になるな......森に入ってすぐだし、いいよね?」
淳はそう言って木から降り、その廃校へと向かった。遠目では分からなかったが、近くで見ると意外ときれいな校舎だった。廃校になってから10年以上は経っているはずなのに、不思議なほど整った状態で残っていた。淳は興味深く校舎の周りを一周してみた。
「うわ、二宮金次郎像がいる......都市伝説じゃなくて本当にあるんだな」
廃校の周りを見て回るほど、淳の好奇心は膨らんでいった。そして一周して門の前に戻ってくると、校舎に入ろうとする人影を見かけた。
「誰だろう?」
そう思って門に近づこうとしたその瞬間、背後から声が聞こえた。
「淳?何してるんだ、こんなところで」
振り返ると、そこには父の姿があった。驚いた淳は、思わず転んでしまった。
「と、父さん!なんでここが分かったの?」
「いや、荷物運びの続きしようとしたら、森に入っていくお前の姿を見かけてな。嫌な予感がして追いかけてきたんだよ」
「そういうことか。ごめんなさい。木に登ったら、この学校を見つけて気になってきちゃったんだ」
淳は、さっき見た人影を思い出し、慌てて校舎の方を振り返った。しかし、そこには何もなかった。いつの間にか、日も沈み始め、辺りは薄暗くなってきていたので、二人はその場を離れることにした。
帰り道の途中、父が懐かしそうに呟いた。
「懐かしいな......あの学校、廃校になってたんだな」
「え!?父さん、この学校知ってるの?」
驚いた淳は、思わず反応した。父は頷きながら答えた。
「あの学校、実は俺が通ってた中学校なんだよ」
「え、そうなの!?」
「ああ。でも、俺が卒業してから20年後くらいに廃校になったって聞いてた。まあ、この辺りも若い人が減ってきたからな」
「なるほどね。父さんは中学の時、どんな子供だったの?」
「好奇心旺盛な子供だったな。いろんな人にそう言われてたよ。いろんなことに首を突っ込んでたなぁ.....後でアルバムでも見るか?」
「いいの?やった!」
父の言葉に、淳は大喜びで祖父母の家に帰った。
氷雨に潜む幻影 @_spf2y
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