氷雨に潜む幻影

@_spf2y

第1話

 夏休みが始まって4週間目、中村淳は遅めの朝ごはんを食べながら、一昨日から作り始めたプラモデルに向かっていた。淳は極度の飽き性で、夏休みが始まってからというもの、新しいことに挑戦するためにパズルや絵を描いたり、いろいろなことに手を出していた。しかし、それらにもすぐに飽きてしまい、退屈を感じていた。

 「はぁ、つまんないな。なんか面白いことないかな」

と、ここ数日ずっとつぶやいていた。せっかくの中学最後の夏休みが、このまま何もなく終わってしまうのはどうにも嫌だった。

 そんな時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 「部屋入るぞ。淳、明日から氷雨のばあちゃん家に行くけど、準備できてるか?」

父親の晴人が尋ねる。それを聞いた淳は、ベッドから飛び起きて「わ、忘れてた!そうだ、ばあちゃん家行くんだった!」と慌てて荷造りを始めた。

 淳は昔からホラーやサスペンス系のゲームが好きで祖父母の家がある氷雨市はまさにそういうゲームの舞台になりそうな、不思議な雰囲気のある町だった。「これで少しは楽しくなるかも」と淳は胸を膨らませ、出発する日を迎えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る