第31話 邪魔者たち


 オベロンはぐっと拳を握りしめると、すっくと立ち上がった。



「あの……、でも俺、男です……」


 俺はおずおずと切り出した。



「子供は、産めない、と思います」


「何を言ってるんだ、ティト!」


 オベロンは俺の手を握ると、ブンブンと振った。


「そんなこと、魔王様になんか関係ない。魔王のつよつよパワーでちゃちゃっとその辺は解決できるはずだよ! ティト、どう? すごくいい話だろう?

君は魔王様の花嫁になるんだ!! 大丈夫、魔王様はまだ若いけど、ダークワイルド系のそこそこイケメンだから、きっと君も好きになるよ!

そして、盛大な結婚式を魔界であげよう! ムカつくけど仕方ないから君のおじいさんだってちゃんと招待するよ!!」




「「そんなこと、させるかっ!!」」


 ファビオとオルランドが同時に立ち上がる。



「オベロン、お前はそんなことのために、俺のティトを利用しようとしていたんだなっ!

絶対に、許せねえ! ここで、始末してやる!」


 いまや、聖剣『ドゥリンダナ』は、その白い剣身に光を宿し、いまにも妖精王を切りつけようとしている。



「妖精王……、私利私欲のために、無垢な子孫にまで手をかけようとするとは、言語道断!

ティトは私のものだ。誰にも渡しはしない!」


 オルランドも今度は外しはしないとばかりに、その黒い魔力をためた指先をまっすぐオベロンに向けている。



「ま、待ってくださいっ! そ、そもそも、おかしいですよっ!

オベロン……、さん。だって、魔王様がどうして喜んで俺と結婚するって思うんですか? 先走りすぎですよっ!

キレイな妖精さんたちですらお断りされたんでしょう? それなのに、普通の男の俺なんかを押し付けられたって、

熨斗つけて返されるどころか……」


 気に入らないとばかりに、即座に首をちょん切られてしまうかもしれない……。


 そう思うと俺はゾッとした。



 この妖精王・オベロン。勘違いで先走りがちなところは、たしかに俺の祖先であると言えるのかもしれない。そういうところは、ちょっとだけ親近感を抱いてしまう。



 しかし、オベロンはにぃっと俺に笑ってみせた。



「まあ、普通はそう思うよね。僕だって、最初はいくらなんでもティトじゃ無理だろ!? って思ってたさ。

でもさあ、これがなかなかどうして、魔王様も乗り気なんだな!!

っていうのもさ、あの魔王様、僕がティトを紹介してあげるっていったら『いらぬ!』とか涼しい顔して言ってたくせにさあ……」


 そこまで言って言葉を区切ると、オベロンはまたヒイヒイと引き笑いを始める。



「あの、坊やっ、なんと!! イヒっ、人間界まで、ティトを見に、来てるっぽい、んだよっ! ぷはっ! ウヒョヒョっ!

さすがは、我が子孫! 僕にはどこがどういいか、さっぱり理解できないけど、なにかこう、ティトには抗いがたい魅力があるのかもねー!

でもさ!」



 オベロンはファビオとオルランドを睨みつけた。



「魅力が有り余っているせいか、気づいたら、余計な人間までひきつけちゃってたんだよねー!!

−−お前たちのことだよ、ファビオ、オルランド!」



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