第32話 本当の気持ち


「僕はティトを人間なんかに渡すつもりは到底ないってわけ。

だから、こうして二人を誘導して、最初は二人のイメージをぶち壊すような変なプレゼントを贈らせて幻滅させようと画策したんだ。でも、お互いの醜い妨害で、肝心のティトには何も届かず、幻滅どころかティトはなんにも気づかないままだったから、まったく進展なし!

仕方なく今度はダンジョン攻略にティトを誘わせて、この二人のえげつない本性と性欲と、醜い争いを見せつけて、二人に密かに憧れているティトに今度こそ『サイッテー!!!!』って、幻滅してもらおうって思ってたんだよねー! 

しっかし『嘆きの森』1日目でさっそく本性むき出しに、寝込みを襲うだろうと思ってたのに、お前ら二人、いったいどこをどうやりすごしたのか、なかなかティトを襲わないし、ティトをめぐっての殺し合いもなかなか始まらないし、そうこうしているうちに気づいたらもうダンジョンも最下層に近づいてるし、二人は王にティトとの結婚の許可をもらっちゃうし、焦った僕が出張ってきたら、何をどう解釈したのか、ティトはファビオとオルランドについてオエーッな誤解をしてるし……、はー、本当にいろいろ苦労させられたよー」


 やれやれ、とオベロンは首を振ると、フリルで飾られた肩をくるくると回した。



「え? 幻滅? 寝込みを襲う? 殺し合いっ!!?? っていうか、結婚、許可? へ、は……?」


 オベロンの話に、俺の頭はどんどん混乱していく。

 ちょ、ちょっといろんなことが多すぎて、事柄の処理が多すぎて対応できないっ!!



「クソッ、最初から全部、このクソ妖精に仕組まれてたってことなのか……」


「良かれと思ってやったことが、すべて裏目に……」


 ファビオとオルランドは二人で頭を抱える。



「でもまあ、ここにきて、こうもうまくいくとは思わなかったよ! いい加減わかったよね? ティト!

いくら鈍感でも、もう知らぬ存ぜぬは通らないよー! 愛の詩や愛の魔道具を贈るのは、もちろん人間の求愛行動!

剣術を教えたり、字を教えてくれたのもぜーんぶいやらしーい下心からくる親切心。 もはや、この二人の君への気持ちは火を見るより明らかだよね? 

ロマンチックなプロポーズの計画だって、とどのつまりはすべてソレ!! その心はズバリ『君とセックスしたい!』

さあ、ファビオとオルランドが二人でイチャイチャしてるっていう変な妄想は捨てて、君の正直な気持ちをここで告白しておくれ! 


『ちょっとかっこいいから少しだけ憧れてたけど、お二人って本当はすごーくかっこ悪い人たちだったんですね。

それに俺をずっとスケベな目で見てたなんて本当に気持ち悪ぅーい!! サイテーですっ!!!!』ってね!

はい、どうぞ!」



 オベロンが俺の目の前に、赤いバラと白いバラを一本ずつ差し出してくる。



「……」


 俺はそれを受け取った。



 −−俺の本当の気持ち……。



「……俺……、俺、俺はっ……、俺だって、俺だって本当はっ……!」


 心臓が最高潮にバクバクいっている!!


 


「さあ、さあ、さあ、遠慮せずに言っちゃって!」


 オベロンのイタズラな瞳。


 俺を見守る二人の真剣な表情……!!



 俺は大きく息を吸い込むと、大きな声で言った。




「俺だって、二人と、すごくセックスしたい、です!!」





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