第20話 誤解と疑惑

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「お茶をどうぞ。ナッツの入ったクッキーもありますよ」


「ああ、悪いな。わざわざ……」


 スイートルームのソファに腰を下ろしたパオロさんは、なんだか落ち着かない様子だった。



「パオロさん、どうやってここまで来たんですか?」


 俺の疑問に、パオロさんはにっかりと笑った。



「フォンターナ先生だよ! あの補助魔法の! あの先生がさ、ティトのピンチだっていうんで、転移魔法でこの町まで送ってくれたんだ」


「フォンターナ先生が……」


 俺はフォンターナ先生にまで迷惑をかけてしまっていたのか……。



「で、ティト、いったいどういうことだよ?

パーティを抜けるってどういう意味だ? 冒険者になるのはやめて、家に入るってことか?」


 パオロさんが身を乗り出す。



「あの……、実は俺、恥ずかしながら全然気づいてなかったんです。

ファビオ様とオルランド様の気持ちに……」


 向かいのソファに座った俺は、ぎゅっと拳を握り締めた。


「えっ、そうだったんか? でも、まさかお前、だって……」


 パオロさんは何かを考え込む様子で、黙り込んだ。


「俺、ダンジョン攻略に行けるのが嬉しすぎて、二人の気持ちのことなんて、全然、考えてなくて……。

でも、旅を続けるうちに、なんだかおかしいなって、思い始めて、で、ようやく、やっと昨晩、

はっきりわかったんですっ!

……、あ、紅茶にシナモン、入れます!?」


「はあ……、そりゃ、よく長いこと気づかずにいられたもんだな……。あの坊ちゃんたちは、すごくあからさまに好意を示してたみたいだったけどな。

……入れてくれ、悪いな」


 パオロはさんシナモン入り紅茶をティースプーンでかき混ぜると、心の底からあきれたように俺を見た。



「で、二人の気持ちに気づいたからには、もう俺はここにはいられません。

俺は、二人の目の前から消えますっ!!」


「……そりゃ、二人は悲しむだろうな……」


 パオロさんは紅茶を一口飲んだ。


「うん、いい香りだ!」



「そうでしょうか? 邪魔者が消えて、すごくすっきりすると思います!

もともと、俺なんて、周りの目くらましの単なる数合わせのメンバーに過ぎないんですから。

これで二人は思う存分、愛し合うことができるってもんです!

……あ、ところでパオロさん、いつも首から下げてるロケットはどうされたんですか?」


 俺の言葉に、パオロは自分のシャツの首元をつかんだ。



「ああ、ロケットは、急いでたんでつけてくるの忘れただけだ。

……っておい、は? は? は? ちょっと待て? 愛し合う、だって? あの二人がかっ……!?

ティト、……お前はいったい、何を……?」


 パオロはうろたえはじめる。



「パオロさん、俺から質問があるんです」


「は? 何だって? ……ティト、ちょっと待て。お前は絶対なにか勘違いしている! そもそもあの二人は……」


 俺は立ち上がり、じっと目の前の男を見つめた。




「ところで、あなたは、パオロさんじゃありませんよね?


――あなたは、いったい、誰ですか?」









【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!

この物語もいよいよ折り返し地点です。


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作者の更新の糧となります!! また後半~番外編に向けても、引き続き応援よろしくおねがいします!!


 読んでいただいた皆様へ愛と感謝を込めて!!


 .mizutama.

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