第19話 王都の大騒動



「パオロさんっ!? え、なんで?」


 パオロさんは俺の仕事の先輩。いまは王都の魔法学園で勤務中のはずだ。


 それがどうしてこんな遠い町まで……。



「ティト、開けてくれよ! いま、王都は大変なことになってるんだ! お前に話さなきゃならないことがある!!」


 パオロさんは力任せに何度も扉を叩いている。


 でもオルランドが張った強固な結界のせいで、中には入れないようだ。




『怪しいわね。駄目よ開けちゃ。こちらから開けたら、結界は無効になるわよ』


「うん、わかってる……」


 『イラーリア』の言葉にうなずく俺。



「おーい、ティト、いるんだろ? 開けてくれよ。こっちは困ったことになってるんだよ。お前にとっても、すごく大事な話なんだ!」



 ――でもパオロさんは大切な俺の先輩で……。パオロさんには、学園で勤め始めたときから、すごくお世話になっていて……。




 だから、パオロさんになにか困ったことがあったなら、俺が力になりたい。




「でもさ、ちょっと扉ごしに話をするくらいなら、いいよね。声は確かに、パオロさんの声なんだし」


『……勝手にしなさい』


 俺はうなずくと、扉に近づいた。




「パオロさん、いったいどうしたんですか?」


「ああ! ティト、そこにいるんだな。よかった」



 パオロさんの安堵した声。



「パオロさん、どうして、こんなところまで……」


「どうもこうもねえよ! 今朝早くに、あの冒険に出た坊っちゃん二人が王都に戻ってきたんだよ」


「それは、知ってます」


 正装した二人は、なにか急ぎの用があると言っていた。



「で、あの二人はすぐに王様のところに行ったらしいんだよ。で、何を願い出たんだと思う?

二人はさ、王様に頼んだらしいんだよ! すぐにでも結婚させてほしいって!!」



 パオロさんの言葉に、俺の目の前は真っ白になった。




 ――ケッコ――――ーン!!!!????


 まさか、そこまで、話が、進んでいたとは……。


 二人の愛は、本当の本当の、本物だったのだ……!!!!




 俺は膝から全身の力が抜けていくようだった。




「おいっ、ティト、聞いてるか? そのことが発表されたんで、王都はもう、大騒ぎだよ!

で、ティト、邪魔なお前を消してやるってやつが、大勢こっちに向かってるんだよ!!」


「お、俺をっ!!??」



 ――なぜ、俺がっ!!??


 俺はそこまで民衆に嫌われているというのか……。


 俺は、たしかに二人にくっついて回っていたが、二人の仲を邪魔するつもりなんてさらさらない。

 もちろん、二人を応援するつもりだ……。心からでは、ないけれど……。




「もう潮時だろう? いい加減に目を覚ませ! お前はあの二人に遊ばれているだけなんだ! 結婚だって、きっと……」



「大丈夫です、パオロさんっ! 俺はもうお二人のお邪魔虫なんかじゃありません。

俺っ、今日にでも、このパーティから離脱するつもりですからっ!」



 ――俺は、ついに扉を開けた。






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