第15話 驚愕の事実
――眠れない。
さっきから目を閉じると浮かんでくるのは、ファビオとオルランドとしたキスの再現シーンばかり。そして二人の唇の温かさややわらかさ、息遣い、そして、そして……。
「うわああああああ!」
俺はベッドの端で頭を抱える。
『うっるさい、早く寝なさい!』
「ご、ごめんさないっ……」
『イラーリア』に怒られた俺は、ベッドを抜け出し、シャワールームへ向かう。
ファビオとオルランドが泊まっている部屋は、最上階のスイートルーム。冒険者の宿屋とは一線を画している。そしてもちろんシャワールームも備え付け。
俺はシャツを脱ぎ捨て、シャワーを浴びて気持ちを落ち着かせることにした。
だが……。
俺の身体の中心部で、存在を主張している一物。
そうだ、俺の身体は二人のキスにすっかり反応してしまっていたんだ。
――そういえば、冒険に夢中で最近こういうことをすっかり忘れていた。
頭からシャワーを浴びながら、俺は自分自身に手をのばす。
「ふっ、あっ、あっ、ああ……っ!!」
――「「ティト……っ!!」」
果てるとき、絶対考えないようにしていたというのに、案の定出てきたのは、ファビオとオルランドの顔……。
二人への申し訳無さに、俺の心は沈む。
タオルを頭からかぶって、そっと自分の寝室に戻る。
ファビオとオルランドのいる部屋からは、まだ明かりが漏れていた。ボソボソと、息を潜めたような話し声も聞こえてきた。
その時俺は、ふと思った。
ファビオとオルランドは「こういうこと」をどう処理しているのだろうか、と。
二人はともに21歳。健康体で、美しく、もちろんそっちの方面も活発であろう。学園にいるころは、常に美しい女生徒たちに周りを囲まれていた。
だが、この冒険の旅に出てからこのかた、ファビオとオルランドが忍んで女性と会う気配はまるでなかった。
この町には冒険者向けの酒場もあるし、もちろんそういうことをするための娼館すらある。だが、何度思い出してみても、ファビオとオルランドがその手の話や、女性の話をしたことすら、なかった気がする。たしか二人にはまだ婚約者や決まった相手はいなかったはずだから、別に誰に遠慮する話でもない。
俺はもう一度、明かりの漏れる二人の寝室を振り返った。
――二人の寝室……。
そうだ、俺はずっと疑問に思ってきたではないか。
なぜ俺はいつも一人部屋なのか?
なぜ、二人はいつも同じ寝室なのか?
身分の違いからいって、俺と同じ部屋で眠りたくない、という二人の気持ちは十分理解できる。
だが、それならば、平民の俺を階下のもっと安い部屋にして、貴族の二人は別々の寝室に泊まるのが一般的なのではないだろうか?
それに、どちらかというと、俺のほうが良い寝室を使わせてもらっている。
――頑なに、二人の寝室にこだわる理由は、もしかして……。
そこまで考えて、俺はすうーっと血の気が引いていくのを感じていた。
旅の最初から感じていた、違和感。二人の間で交わされるなにか意味ありげな視線。
床に入る時間は十分早かったというのに、なぜか翌朝、寝不足気味であることが多かった二人……。
ファビオが言い出した冒険の旅に、二つ返事でOKしたオルランド。
パーティのメンバーに俺を選んだのは、貴族社会に差し障りのない人間で、どうしようもなく鈍感で、間抜けで、なおかつ、どうでもいい存在だったからに違いない!
「ティトはなにもしなくていいよ!」と二人が繰り返し言った意味が、今ならわかる!
そして、極めつけは、今日の出来事!
俺とキスしたファビオに腹を立て、見せつけるように自分も俺とキスをしたオルランド!
たしかルールとか、ペナルティがどうだとか言っていたっけ……。二人で決めた約束事があるとかなんとか……。
俺は衝撃に、身体を貫かれる思いだった。
いま、すべての疑問が、一本の線で結ばれた!!!!
そう、だから、つまりは――!!!!
――二人は、秘密裏に付き合う、真剣な恋人同士だったのだ!!!!
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