第14話 仕返し
「目を、閉じて。ティト」
ついばむようなキスの合間に、オルランドがくすりと笑う。
「あ……、あ、んんっ……」
返答しようと口を開けたすきに、熱く滑った舌が入り込んできた。
「ん、あ、ああ……」
オルランドの落ち着いた見た目からは想像がつかないほど、熱くて情熱的なキス。
唇をぴったりとくっつけて歯列をなぞられると、ゾクゾクと得体のしれない何かが、足元から上がってくる。
「おっと、大丈夫かい?」
立っていられなくなった俺の腰を、オルランドが支える。
「あ、あ、あ、んっ、あ、はあっ……、オル、ランド、さ、ま……っ」
俺は必死でオルランドの背中にしがみついた。
「ティト、舌を出して……」
「あっ、もう……、駄目……っ、んっ……」
俺の情けない声に、オルランドは俺の後ろ首に手を回す。
「ごめんね、ティト。はじめからこんなキスをしてしまって……、でも、ティトのこんなに可愛い顔……。
私も我慢できそうにない……」
腰に回っていたオルランドの手が、そのまま尻に伸びたとき……、
「おいっ、オルランドっ! お前こそ調子こいてんじゃねーぞっ!」
「……っ!!」
俺が目を開けると、オルランドの首元に聖剣『ドゥリンダナ』の青白く光る剣身が突きつけられていた。
ファビオが射るような眼差しで俺を見ている。
「ファビオ、様……」
「ははっ、ちょっとやりすぎちゃったか。わかったわかった。もう離れるから、その物騒なものをどけてくれるかな?」
オルランドは俺から離れると、降参とばかりに両手を挙げた。
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それからはずっと頭がぼんやりしていて、どうやって宿屋まで戻ったのかよく覚えていない。
ただ、ファビオとオルランドは今まで見たことがないほど険悪な雰囲気で、夕食の席でもお互い一言も口をきかなかった。
俺は俺で、どうしても肉やパンを咀嚼するために動く艶めかしい二人の唇にばかり目がいってしまい、恥ずかしくて直接二人と目を合わせることができなかった。
部屋に戻った俺が、いつものようにブラシとクリームを準備しようとすると、オルランドに止められた。
「今日はいいよ。ティト。ちょっと今から、ファビオと大切な話があるから、私達はもう部屋に戻るね。おやすみ」
「……はい、おやすみなさい。オルランド様、ファビオ様」
さっきまで全く口をきいていなかったというのに、宿屋の寝室では積もる話があるのだろうか?
――だが、俺はそんな疑問を口に出せるような身分ではない。
「おやすみ、ティト」
ちらりと俺を振り返るファビオに、俺は頭を下げた。
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