第12話 いよいよダンジョン探索
俺には、このダンジョン調査を受けたい理由がいくつかあった。
まず、調査の達成目標がないこと。つまりノルマがない。ということは、達成出来ないときの違約金のリスクもないことだ。おまけに、期限もない。このダンジョンは難易度が高く、現在38階層まで攻略されているが、一体何回層まであるのか分かっていない。だから極端なことをいえば何年かかってもいいのだ。
おまけにダンジョンに潜れば、モンスターがドロップアイテムを落とす。地上でモンスターを倒しても手に入るのは、肉や毛皮、素材ぐらいだが、ダンジョンなら何か価値のあるものがドロップされることがあるらしい。さらに宝箱というお宝ゲットのチャンスまである。
そして、これは秘密だが、俺は、ダンジョンのドロップ確率最大上昇という魔法陣を持っている。これは魔法陣を扱えるようになって間がない頃、ララザニアに聞きながらつくった魔法陣で、いつかダンジョンに潜る日を夢見てつくっておいたものだ。しかも、そのとき、ドロップ内容変更という魔法陣もついでにつくっておいた。
ドロップアイテムがしょぼい場合、この魔法陣を作動させておけば、ランダムで違うアイテムをドロップする。つまり、毎回何をドロップするか楽しみができるチートな魔法陣だ。ドロップアイテムはものによっては高値で売れる。高値がつかなくても売れば金が稼げる。つまりダンジョン攻略は、かなり儲かるのだ。
しかも、普通の冒険者ならダンジョンの攻略に、大量の荷物を持って行かなければいけない。
ダンジョンに深層に潜るなら、最低でも攻略予定の階層数✕4〜6倍の日程を見ておかなければならない。38階まで攻略したチームは150〜250日もかかったはずだし、その分の水と食料を持っていかなければならないことになる。
ダンジョンの魔物は倒したら消えるので、地上の魔物のように食料にする訳にはいかないのだ。その上、テントや毛布などの野営道具もかさばる。夜も交代で見張りを立てないと魔物に襲われるので、少人数でのダンジョン攻略も考えられない。となると大人数と大量の荷物がダンジョン攻略に必須となる。
しかし、俺の場合は違う。命の水があるから、水を持っていく必要はない。食料も、魔の森を彷徨っている間に倒した魔物の肉が異次元収納にたっぷり収まっている。結界の魔法陣があるから、夜もゆっくり眠れる。
ただ、今回はテントや着替えなどは買って持って行くつもりだが、これも異次元収納に入れておくので、荷物としては皮袋一つと革のポーチを持っているだけだ。
それに狭い場所では、虚空拳とショーソードを使った次元斬撃はとても有利だ。武器屋でショートソードも買っておいたから、普段はそれを使うつもりだが、万一それが折れても、女神像の左手からいつでも新しい剣が出せる。
ただし、こういったことは受付嬢は知らないので、ソロでダンジョンに入るのを必死で反対したわけだ。
俺達は、依頼受託を無理やり認めさせた後、買い取りカウンターで素材の買取りを頼み、解体場でクラックベアやホーンホースを数体ずつ出して、金貨数十枚を得てギルトを出た。
その日の残りと翌日は、街でテントのほか、毛布や着替えなどを多めに買い込み、塩などの調味料などを買って、翌々日にダンジョンに向った。
ダンジョンまでは歩いて2日かかる。馬車はあるが、早くないし窮屈な上にお尻が痛くなりそうなので敬遠した。
日中は街道を歩いて進み、日が暮れたら街道から外れて森に入り、森の中でテントを出して休んだ。テントには異次元境界の魔法陣を貼り付けてあるので、次元操作の魔法を操れない限り、見つけることも触ることも出来ない。
異次元境界の効果は、外の気温変化、雨、風を始め、あらゆる物理攻撃も魔法も絶ち、テントの内部に影響を与えない。その異次元境界は、テントの床も含めて、テントをまるごと包んでいる。しかも内部は空間拡張の魔法陣で10畳位の広さにしてある。テント内部の気温は一定に保たれ、灯りは魔法陣で自由につけたり消したり出来る。
そして、地上50センチほどの高さがある空気のベッドを魔法陣でつくってあり、ここに街で買った毛布を敷いて眠った。
2日後、ダンジョンの周辺に出来ている宿場のようなところに着いた。
宿で泊まってもいいが、料金がもったいないないし、他の冒険者とのトラブルを避けたかったので、俺達は宿場からかなり離れたところで森の中に入ってテントを出した。
それに、夜は2人だけで過ごしたかったからだ。
俺達が森の中に入っていったのを遠くから見ていた冒険者が、夜遅く、よからぬ目的を持って俺達の後を追うように森の中に入ったが、結局何も見つけることは出来ず、魔物に襲われただけだった。
翌朝、俺たちはダンジョンの入口の行列に並んだ。
「Cランクパーティーだ。メンバーは2人。これが依頼書だ」と、ギルド発行の依頼書を見せる。
ダンジョンの入口に設けられた受付のギルド職員が、依頼書に受付印を推して、ダンジョンの地図と一緒に返してくれた。
稼ぐ目的でダンジョンに勝手に入る冒険者は、宿場の武器屋で地図を買わなければならないが、ギルドの依頼で来ているから地図をもらえる。
俺は、依頼書と地図を革のポーチに入れる振りをして、異次元収納にしまいこんだ。
そしてダンジョンの中を少し進んだところで認識阻害の魔法陣を作動させて地図を取り出して検討した。
『浅い階は探索しても仕方がない。まず3階まで降りて、そこからゆっくり探索しよう』
俺は久しぶりに魔法陣のカテゴリーをステータスウインドウに出し、ダンジョン、位置、情報、探知、魔物、宝物、ドロップ品、鉱物、人間、その他を選んで魔法陣を創った。
これでダンジョンの中はオートマッピングできるし、マップ自体がレーダーの働きをしてくれる。
今、作動させている魔法陣はこんな具合だ。
認識阻害の魔法陣
効果 冒険者も魔物も俺達の存在に気付かなくなる。
ダンジョンオートマップ&探知の魔法陣
効果 ダンジョンで移動した場所を自動でマッピングする。また、マップ上に周囲に存在する生命体や魔力などを表示する。
威圧の魔法陣
効果 魔物や人間を威圧する。レベルの低い魔物は近寄らなくなる。
罠察知の魔法陣
効果 罠の存在に気付く。
罠回避の魔法陣
効果 仕掛けられた罠を回避する。または罠が発動しなくなる。
ドロップ確率最大上昇の魔法陣
効果 ダンジョンで魔物を倒したとき、アイテムをドロップする確率が最大になる。
防御魔法陣
効果 俺達の周囲に防御効果のある結界を張る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます