第10話 いきなり昇級試験
翌朝、冒険者ギルドに入ると、リーザの顔を知っている受付嬢が、
「リーザーネさんでしたね。魔の森に行かれたと聞きましたがよく戻って来られましたね。他の方々もご無事ですか?」と声を掛けてきた。
「私のパーティーの他のメンバーは、みんなトールベアに殺られたわ」
「えっ、あなた以外は全員死んだの?」と、受付嬢が驚きの声を上げた。
「そうよ」とリーザは辛そうに答えながら、4人分の冒険者証をカバンから出して、受付嬢に手渡した。
「あなたたちのパーティーは、依頼を受けて森に入ったわけじゃなかったですね」
と受付嬢は、冒険者証を受け取りながら確認している。
「うん、依頼は受けていないはず。リーダーが勝手に決めて森に入っただけだと思うけど」と、リーザは自信が無さそうに答えた。
「それならあなた達の遭難は、ギルドとは関係が無いということで処理させてもらいますね」
受付嬢は、リーザのパーティーが死んだことに、ギルドは責任はないことを確認したかったようだ。
「うん、ギルドに責任はないはずよ」とリーザ。
「それで、そちらの方と新しいパーティーを組んだということですか?」
リーネのパーティー全滅の件は、さらっと流された。ギルドは結構ドライなんだなと思った。
「俺は、まだ冒険者として登録をしていないんだ」と俺が口を挟む。
「ついでに私たちのパーティーも登録して」とリーザも続けた。
受付嬢はカウンターの下から用紙を2枚出して1枚は俺に、もう1枚はリーザに渡した。
「こちらは冒険者の登録用紙です。記入は名前と年齢だけでもいいですよ」と俺に向かって言う。それとあなたの方はパーティー名とメンバーを書いて下さい。とこちらはリーザに向って言った。
俺が用紙に名前と年齢だけを書き込んで返すと、受付嬢はそれを確認しながら、
「ランク判断の試験を受けますか?試験なしの登録は、Fランクになりますが、試験を受けたら試験判定の内容が良ければEかDからスタートできます」と勧めてくる。
俺がリーザをチラッと見ると、
「コルネスは強いから試験を受けた方がいいわ」とアドバイスをくれた。
「それじゃ、試験を受ける」と受付嬢に答えると、
「それではこちらへ」
俺は受付嬢に、建物の裏にある練習場に案内された。リーザが当然のように付いて来る。
受付嬢はカウンターを出るときに誰かに声を掛けていたので、俺たちの後から筋肉の塊の様な大男が練習場に入ってきた。
「試験を受けるのはどいつだ?」
大男がドラ声で吠える。
「彼が試験希望のコルベメネスさんよ」
「剣士のようだな。模擬戦用の剣を渡してやれ」と男は受付嬢に命令した。
俺は受付嬢から剣を貰い左手に持った。
「何処からでもかかってこい」と大男。
女神像の左腕のスキルだけで十分と思ったが、人間と戦うのは初めてなので、
身体強化Lv4、身体能力上昇Lv4、筋力上昇Lv4、皮膚硬化Lv4、身体硬化Lv4、怪力Lv4、剛腕Lv4、頑強Lv4、耐久力上昇Lv4、反射神経上昇Lv4、超反応Lv4、俊敏Lv4、俊足Lv4、跳躍Lv4、視覚強化Lv4、動体視力Lv4、聴覚強化Lv4、回避Lv4、見切りLv4、体さばきLv4、足運びLv4、拳闘術Lv4、格闘術Lv4、捕縛術Lv4、気配察知Lv4、気配探知Lv4、魔力感知Lv4、魔力視Lv4、熱感知Lv4、危機察知Lv4、直感Lv4、未来視Lv4、超回復Lv4、身体再生Lv4、超高速再生向上Lv4、即死回避Lv4、物理攻撃耐性Lv4、魔法攻撃耐性Lv4、経験値増加Lv4、成長速度上昇Lv4、転移Lv4のスキルの魔法陣も作動させておくことにした。
俺は左手で剣を構えると、数歩踏み込んで剣を振り降ろした。
左腕の斬撃はLv12なので強烈だが、その他のスキルはLv4の動きなので、試験官は余裕で俺の剣を躱した。
「ほ〜、剣は速いが、踏み込みが甘いな。我流の剣だな。アンバランスだ」
試験官は感想を述べながら、俺の攻撃を待っている。
俺はもう一度剣を構えると、再度踏み込んで剣を振り降ろした。今度は、踏み込みを深くし、斬撃の力も少し強めている。
ゴツッ、鈍い音がした。
試験官は俺の剣を払おうとしたが、それが出来ずに、そのまま剣を押し込まれて、俺の剣は勢いを削がれることなく試験官の頭に当たって止まった。
『しまった。力を入れ過ぎた』
試験官は、頭から血を吹き出しながら棒のように後に倒れた。
「キャ〜」という受付嬢の絶叫が試験場に響き渡る。
俺はすぐに試験官に駆け寄り、走りながらメガヒールLv4の魔法陣を作動させた。
試験官の体が一瞬だけかすかに光った。しかし、試験官は起きない。俺は試験官の横まで行って、もう一度メガヒールの魔法陣を作動させた。
試験官の体がさつきよりも強く光り、試験官は目を開いた。
その頃には、受付嬢もリーザも、それから試験場に居合わせた数人の冒険者も試験官の横まで駆けつけて来ていた。
「目が開いたぞ」
「生きてるぞ」
「良かった〜」
「マスター」
最後の声は受付嬢だった。
「マスター?」俺が受付嬢の方を見ると、
「ギルドマスターですよ。あなたが倒したのは」
その一言を聞いて、その場に居た者全員が絶句した。
「ギルドマスターだったのか?」
居合わせた冒険者の一人が間の抜けた声を上げる。
「マスターは元Aクラス上位の冒険者ですよ。それを一撃で」と受付嬢。
その時、
「う〜ん」と、試験官が唸りながら体を起こした。
「何だ?いったい?お前たちは何故ここに集まってる?」
「マスターが彼に打たれて倒れたんですよ」と、受付嬢が説明する。
「そうか、受け止めたはずだったが、受け切れなかったのか?」
ギルドマスターは、そういいながら頭に手をやって打たれたところを触り、
「怪我はしていないようだな」
「何言ってるんですか、マスター。頭から血が吹き出して大変だったんですから。この人がハイヒールをかけなかったら死んでたかもしれないんですよ」
受付嬢はプリプリ怒ってる。これ程怒っているのは、それだけマスターを心配しているからだろうと、俺は思った。
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