第3話 ついに遠距離攻撃

攻撃スキルの中に、虚空突や虚空拳というのがある。どんなスキルか興味があるが、灰色で表示されているのでまだ使えないのだろう。

実際、使おうとしても何も起こらなかった。

『ということは、今使えるのは灰色表示になっていない次のものだけか?』


攻撃スキル

皇帝像の右腕

拳術

巨岩拳 Lv1


女神像の左腕

槍術

突き技 Lv1 

剣術

斬撃 Lv1


防御スキル

女神像の鎧 Lv1

皇帝像の鎧 Lv1


魔法

女神像の左腕

命の水 命の炎


剣術のスキルは、あれから剣を出して振り回していたら、斬撃Lv1になった。

『まっ、槍と剣があるし、水と火の魔法が使えるから、何もないよりは随分マシだ』

俺は内心笑みを浮かべながら

『さぁ、ここはどんな世界だろう?とにかく出発だ』と、歩き出した。


狼から剥いだ皮を細く切った紐で、狼の焼いた脚を括って肩から吊るし、左手には槍を出したまま数時間歩いたところ、いきなり矢が飛んできて、鎧に当って跳ね返えされた。

「何だ?」

俺は槍を構えて身構える。

ギョエ、ギョエと鳴き声を上げながら、数匹の緑のモンスターが俺に向かって駆けてくる。

モンスターが槍の射程圏内に入ったところで俺は槍を速射砲のように打ち出して、あっという間に数匹を倒した。

目の隅のステータスウィンドウに『ゴブリンを倒しました』という文字が燦めいたので、この緑色のモンスターがラノベ定番の魔物、ゴブリンだとわかった。

ゴブリンというのは知能が低いらしく、仲間が倒されても気にせずに、俺に襲いかかるために駆けてくる。

そして俺は近づいた奴らを次々と槍でしと仕留めていく。こうして一方的な殺戮が続き、最後に離れたところから弓を打っていた一匹のゴブリンだけが生き残った。俺は巨岩拳を発動させ、足元に転がっていた大きな石を大きな手のままで拾い、生き残ったゴブリンめがけて投げつけた。次の瞬間、ゴブリンの頭が爆発したように弾けて最後のゴブリンが死んだ。

面白くもない戦いだったが、これで槍を使った実戦ができたし、巨岩拳で投石しても効果があることが分かった。

その後も森の中を歩き、猪型の魔物グルフボア、6本脚の熊型の魔物クラックベアと出くわして倒した。

グルフボアは正面から突っ込んできたところに槍を打ち出したら、見事に串刺しになってくれた。

猪の肉は美味いかもしれないので、不味い狼の脚を捨てて、替わりに猪の脚を切り落として焼いて持って行くことにした。

クラックベアは、立ち上がると4メートルもある巨大な熊型の魔物で、4本ある前足で何度も槍を防がれたので、槍だけでは倒せず巨岩拳が切り札になった。この戦いで巨岩拳は直径が3メートルもある拳になることが分かった。巨大な岩の拳の一撃に、クラックベアの頭が潰れて最後は瞬殺だった。

これらの戦いの後ステータスをチェックすると、嬉しいことにレベルが上がっていた。


攻撃スキル

皇帝像の右腕

拳術

巨岩拳 Lv2

虚空拳 Lv0 


女神像の左腕

槍術

突き技 Lv2

虚空突き Lv0

剣術

斬撃 Lv1

虚空斬撃 Lv0


防御スキル

皇帝像の鎧 Lv2

女神像の鎧 Lv2


魔法

皇帝像の右腕

次元操作 重力操作

女神像の左腕

命の水 命の炎 魔法陣


『攻撃スキルも防御スキルも上がっている。スキルは使っているとレベルが上がるのか?』

気になるのが虚空のついたスキル、虚空突き、虚空斬撃、虚空拳の3つのスキルだ。

『今はグレー表示になっていて使えないが、いずれ使えるようになるのだろう』


さらに森の中を歩き回っていると、夕方が近づいて来た。夜は魔物の時間のようだ。森の中の魔物たちの気配が濃くなる。

そろそろ野営の場所を決めよう。

俺はそう考えると一本の大木の根本を選んで下草を命の炎の魔法で焼き払い、小さな空地と焚き火をつくった。大木を背にして腰を下ろすと、目の前の焚き火に木の枝を放り込む。腰にぶら下げていたゴブリンから奪った皮袋から一度焼いておいた猪の肉を取り出し、木の枝に突き差して、火で温める。

肉の焦げるいい匂いがしてきたので、早速かぶりついた。食べ終わると、命の水で脂で汚れた手を洗い、喉を潤した後、左手に槍を抱えた格好で樹にもたれた。

時折、木の枝を焚き火に追加し、周囲を警戒しながら眠る。

『全身が鎧に覆われているので、眠っている間に襲われても大丈夫だろう』

こうして俺は、昼は魔物と出くわしては狩り、夜は樹にもたれて眠りながら、何日間も森の中をさ迷った。その間、左腕の槍術はレベルが上がったし、右腕の巨岩拳もレベルアップした。

そして、突き技がレベル10になったとき、その瞬間が訪れた。

虚空突がグレー表示でなくなったのだ。

俺は早速虚空突きを試した。20メートルほど離れた梢に向かって槍を突出す。槍はいつもと違って伸びることはなかったが、20メートルほど先の梢を切り落した。

「やったぜ」

俺は声を出して小躍りし、ガッツポーズを決めた。

遂に、待ちに待った遠距離攻撃の手段を手に入れたのだ。

『突き技がLv10になると虚空突きが使える。それなら斬撃も巨岩拳もLv10になると、それぞれの虚空スキルが使えるのか?』

すると今まで斬撃のレベルアップをしてこなかったのは痛い。虚空斬撃の方が、虚空突きよりも使い勝手が良さそうだからだ。

虚空突きは、どうしても1対1の攻撃になってしまうが、虚空斬撃なら一度に多数の敵を斬ることが出来る。俺はそう考えて、これからは斬撃のレベルアップも図ることにした。


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皇帝像の右腕、女神像の左腕 肩ぐるま @razania6

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