第55話 脅威の成長

「貴方も逃げないと危ないです…よ……って、進さん?」


「あ、ほんとに進さんだ。お久しぶりです。この前は晴太がすみませんでした。」


 こいつら、今頃俺に気付いたのかよ。

 ていうか雨太は、よくこの状況で挨拶なんて出来るな。


 俺は走って来る2人とタイミングを合わせて、並走し出した。


「お前ら、こんなとこで何やってんだ?てか、このモンスターの群れはどうした。また何かやったんじゃないだろうな。」


「何もしてませんよ!僕、ちゃんと心を入れ替えたんです。魔物には急に襲われて……僕だって困ってるんです。」


 心を入れ替えたねぇ。

 あんな事があったばかりだからどうにも信用ならないな。

 そもそもシルフィードは、自分の何が悪かったかも自覚して無さそうだし、そういうところが本当にタチ悪いんだよなぁ。

 ヤバいな。話してると何だか助けたくなくなって来た。


「で、雨太はどうして此処に……っていうかなんでこいつといる?」


「ちょっと12階層の魔物に用があったんですけど、晴太がまた寝ちゃって……シルには助けて貰って、今日限定でパーティを組んだんです。」


 助けた?雨太を、シルフィードが!?

 いや、雨太が戦えないのは知ってるけど、それ以上にシルフィードの方が弱いはず。

 まだ逆の方が納得できるってもんだ。

 なんせ雨太には命の危機に発動するスキルがある訳だし。

 となると、シルフィードの奴まさか……


「雨太のこと騙したりしてないだろうな。」


「してませんよ!そんなこと!いいでしょう。そこまで疑うなら、生まれ変わった僕の力を見せましょう。」


 そういうとシルフィードは立ち止まり、くるりと反対を向いた。


「あ、このバカっ!」


 百は超えそうな群れ相手に正面から戦おうとする奴がいるか。


 慌てて引き寄せようとするが、突如、シルフィードの体が光り輝く。

 これは以前も見たことがある、あのマイナススキル【自業自得】。


「それやってもお前の能力が下がるだけだろーが。戻れ!」


「進さん。言いましたよ。僕、心を入れ替えたって。【自業自得】は悪行を重ねるとマイナス方面に作用しますが、善行を積むとプラス方面に作用します。だから、今の心を入れ替えた僕なら——」


 瞬間、シルフィードの姿が消えた。


 数秒後、打撃音が響く。

 音の方向に視線を向けると、そこには魔物5体を一瞬で片付けたシルフィードの姿があった。と思ったが、またしても姿が消える。


「まあ、この程度は訳ないですかね。」


 今度は、隣。

 ハッと視線を向けると、またしてもいつの間に移動したか分からないが、俺の隣にはシルフィードが立っている。


「ね。僕、成長したでしょ。」

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