第54話 安全地帯
オークを倒した後、10階層に向かった俺たちは同じ戦法でユニコーンを退治した。
やはりあの戦法はかなり有効で、さほどの苦労もなくユニコーンも倒す事が出来た。
強いて問題点を上げるとしたら、遠距離攻撃がちょっと危ういくらいだ。
引き寄せられはするが、遠距離からの攻撃手段を持つ魔物は、射程距離外からでもやたらめったら攻撃して来る様になった。
まあ攻撃は直線的で読みやすいので、避けるのは容易いが面倒といえば面倒くらいのもの。
注意する、程度の対策で対象できる。
そして10階層を余力を残して突破できる事がわかった俺たちは、後日、どこまで下層に行けるかを試してみる事にした。
【ダンジョン14階層】
思いの外、11階層以降に出て来るモンスターに手応えがない。
そう感じた俺たち3人は、進めるだけ下の階層へと進んで行く。その結果が現在の14階層。
体感だが、ダンジョンに入って既に半日以上が経過している。
昼前に入ったから時刻は22時くらい。
今日はこの辺で休んだ方がよさそうだ。
「2人とも、もうすぐ夜が来る。セーフティゾーンがある15階層に行くか、それとも地上に戻るかどうする?」
【セーフティゾーン】
ダンジョン内に存在するモンスターの出現率が極めて低い場所だ。
とはいっても完全に出現しない訳ではないが、セーフティゾーンには冒険者が多く集結する為、ローテーションで警備を担当する事で十分な休息を取れる仕組みになっている。
「私はどっちでもいい。2人に合わせるわ。」
「私は帰りたいかなぁ。お風呂にも入りたいし。進は?」
「俺か?俺は——」
先に進みたい気もするが、パーティメンバーは女性2人。此処は帰った方がよさそうだな。
そう結論を出した、その時だ。
俺たちが来た道から足音が迫って来る。
数は——1人、いや2人……人以外の足音が混ざってるな。
何かに追われてる?
そうしている間にも足音が近付いて来る。
「——構えろ、来るぞ!」
こちらへと迫って来る足音の正体。
それは数ヶ月前に俺たちを巻き込んだお騒がせ兄妹の兄の方、シルフィードとこれまた数ヶ月前にユニコーン戦に俺を巻き込んだ、晴太もとい雨太だ。
「「うわーーー!!!!そこの人たち、逃げて、逃げて!!」」
叫びながら走る2人の背後から夥しい数のモンスターが追って来ている。
「ちょ、あれは無理。ぜーーーーったい無理!」
「走って!逃げるわよ!」
星川と金川の2人は既に逃走の準備をしている。
でも、逃げるって何処に?
いや、ある。
近くにモンスターが寄って来ない場所が。
「2人とも、15階層まで走れ!俺はあの2人を回収してから行く。」
俺は即座に金川にナイフを投げ渡す。
「それ、15階層の何処でもいいから刺しといてくれ。適当なタイミングで飛ぶ。」
「……無理するんじゃないわよ。」
「そっちこそ。気をつけて。」
駆け出す2人に背を向け、俺はモンスターの群れの前に立ち塞がる。
「さあて、ちょっとだけ頑張りますか。流石に知り合いに死なれると後味が悪いしな。」
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