第53話 意見

 辺り一面、焼け野原。

 オークなんてもう原型も残っていない。


「うっわ〜。こんなに威力出るんだね」


 スキルを使用した本人もこの驚きよう。

 たぶん今まではここまで溜めた事がなかったんだろう。


 それにしても、この戦法。かなり使えるかも知れない。

 全員が安全圏からに攻撃が可能。俺と金川に足りなかった火力も星川がいれば十分に補える。欲していた前衛ではなかったが、これはこれでアリなんじゃないだろうか。


『経験値が一定値を超えました。レベルアップします。』


 大量の魔物を倒した事で、レベルアップも完了。あと1レベルで俺も、もう1つスキルを得ることが出来そうだ。


【千客万来】は大量の魔物を集められるので経験値稼ぎにもってこい。【星火燎原】は溜めの時間さえ稼げば鬼火力の必殺技。

 本人に自覚はないだろうが、流石の逸材だな。


「あ、ランクアップだ。」


 ふと、星川からそんな声が聞こえた。


 まあ俺もレベルアップした訳だし、金川と星川がレベルアップしてもおかしくはない。

 レベルまでは聞いていなかったが、ランクアップしたという事は19レベルだったのだろう。


「———ッ!」


 星川が何かに反応し、神妙な面持ちになる。

 このタイミングだと、スキルに関する事だろうが、何か嫌なスキルでも手に入ったのか…


 正直、どんなスキルが手に入ったのか気になるが一応、星川はまだ仮入団だ。

 自分から話してくれない限りは聞かない方がいいだろう。


 さて、この5階層にはもう用はない。

 今日は一旦帰るか、それとも余力もあるし先に進むか……どうするか。


 個人的には10階層までは余裕で行けそうだが、俺1人の意見では決められない。

 とりあえず近くにいる星川の意見から聴くことにした。


「星川、この後はどうする?今日はもう帰るか?それとも下まで行ってみるか?」


「う〜ん……まだ余裕だし出来たら下層にも行ってみたいかも。私、5層より下には行ったことないから。」


 星川は先に進む選択をした。

 俺と金川は10階層のボスまでなら対処できる。この階層までなら、まだ許容範囲だろう。


 俺も先に行きたいし、もし金川が断っても二対一。だけど無駄なトラブルを避ける為には、出来る限り全員の意思を統一しておいた方がいい。


 俺は金川の元へと向かう。


「金川。俺と星川は先に進もうと思ってるんだが、お前の意見を聞きたい。」


「いいと思うわよ。そもそも私たち2人でも10階層まで攻略できるんだし、今日はユニコーンまで倒して、明日以降に更に下に行くっていうのが理想的じゃない?」


 なるほど。確かにそうだな。

 初見の敵と戦うのは神経を使う。

 そんな状況を経験して下層に行くより、今日でユニコーンに慣らして明日から本腰で探索した方が賢明だ。


 意見が固まった俺たちは、10階層のユニコーン討伐を目標に下層へと降りていく。

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