第52話 作戦
【星火燎原】の火は、溜めがなければ大した威力にはならない。だが、逆にいえば溜めさえあれば相当の火力を引き出せ、どんな魔物の群れでも殲滅することが出来る。
杖の性能である程度の威力増強は見込めるが、今回の敵の数を見るに3分以上は必要だろう。まあ、実際に見ないと分からないが大まかに考えて5分といったところか。
【星火燎原】の発動中、星川は身動きが取れなくなる。ソロなら致命的な弱点。
走って逃げ回る事くらいは出来るらしいけど、反撃が出来ないので動物的な身体をしている魔物相手だとそのうち追いつかれてしまう。
今までは隠れて溜めが終わった後に戦闘開始していたらしいが、やはりそんなやり方には限度があってギルドを探していたそうだ。
だけどその弱点も、俺がいれば解決する。
「金川、魔物は持ちそうか?」
「第一陣はたぶんもう直ぐやられる。二陣準備するから引きつけといて。」
「了解。星川、頼んだ。」
「はいは〜い。それじゃあ【千客万来】」
再び発動する【先客万来】。
金川のスキルで操られていた魔物も含め、全ての魔物がこちらに集まって来る。
これは……なかなか怖いな。
これだけ大量の魔物に囲まれると自然と恐怖心を煽られる。
星川はこれに耐えていたのか。
「メンタル強いんだな。」
「いや、信頼できる人といる時しか使わないよ?普通に死んじゃう可能性が高いし。」
「そりゃそうだ。じゃあ、ちゃんと信頼に答えないとな。」
星川の肩に手を置き、【神出鬼没】を発動する。逃げて距離を稼ぎ、引き寄せてはまた発動する。この繰り返し。
星川と一緒にいることで魔物は勝手に俺たちに引き寄せられるので、この方法は時間稼ぎの手段としてはかなり有効だ。
そしてその隙に、金川の準備も完了する。
「準備完了。【千客万来】解いて!」
金川からの合図と同時、第二陣となる【百鬼夜行】の魔物が再度奇襲を仕掛ける。
星川の【千客万来】で敵の注意を引きつけ、俺の【神出鬼没】で時間を稼ぎ、金川の【百鬼夜行】で奇襲を仕掛け、最後は十分に火力を上げた【星火燎原】で殲滅する。これが星川を主軸とした俺たちの新しい戦い方だ。
オークの取り巻きである魔物たちも金川の奇襲で随分と数を減らして来た。
この状況ならそろそろいけそうか。
時間は5分以上稼いでいる。
【星火燎原】の炎はギルド内で見たあの大きさを遥かに超えていた。
これならオークをやれる!
「いっくよ〜。【星火燎原】」
俺の合図で、炎が放たれた。
逃げようとしてもその行手は、金川の魔物が食い止めている。
炎は真っ直ぐオークに突き進み、直撃と同時に爆散した。
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