第51話 連携確認

 【ダンジョン5階層】


 新たに星川キララをパーティに加えた俺たちは、とりあえず連携の確認を行う為に選んだ相手はオークだ。


 ぶっちゃけ、今の俺と金川ならオーク程度余裕を持って倒すことができる。

 だから、今回のメインは俺たちじゃなくて星川キララだ。


 星川キララの主な武器は、杖。

 スキル【星火燎原せいかりょうげん】の時間短縮及び威力強化を目的としたスキル補助武具。

 杖自体に攻撃力がある筈もなく、近距離戦に関しては全くだと思った方がいいだろう。


「じゃあ作戦通りに。やれそうか?星川。」


「だいじょ〜ぶ。でも、いざって時はちゃんと助けてね。信じてるから。」


 星川は1人、俺たちから離れるとスキル【千客万来】を発動した。


「お〜い、み〜んな〜。こっちだよ〜」


 大きく手を振り、魔物たちに呼びかける。

 するとオークだけではない。周囲にいた魔物も一斉に星川の方を見て、一目散に駆け出した。


 これが【千客万来】の力か。

 あんまり敵が強くない階層なら使い道があるが、無闇に使わない方が良さそうだ。

 下層で誤って使いでもしたら、強力な魔物が集まって逆にピンチを招きかねない。

 だけど、まあ掃討したい時とか罠を張っている場合とかだと、便利かも知れないな。


 大多数の魔物が、星川の元に集結している。もはや取り囲まれているし、ソロであの状況なら絶望的だな。

 だけどこれも作戦の内。

 あいにくと俺の【神出鬼没】があれば、魔物の群れに取り囲まれても逃げ出せる。


「じゃあ金川。時間稼ぎは任せた。」


「任されたわ。まあ、やるのは私じゃなくてこの子達なんだけど。」


【百鬼夜行】を使い、集めた10数匹の魔物を召喚した。敵の群れと比べたら少ないが、目的はただの時間稼ぎ。別にこいつらで倒す訳じゃない。


「行きなさい。」


 金川の指示に従い、奇襲を仕掛ける。

【千客万来】で引き寄せられていた魔物は接近に気づかず、数体がやられ、魔物同士の同士討ちが始まった。


 よし、俺はこの隙に星川を回収っと。


 俺はダンジョンに入る時、必ずパーティメンバーに所持品(ナイフ)を渡す様にしている。

 これをやっていれば、いつでも救出可能って訳だ。


 逃げ回る星川の元にワープすると、彼女は少し驚いた顔をしていた。


「よし。じゃあ脱出しよう。」


「驚いたぁ。ほんとにいきなり出て来るんだね。」


 まあ、ワープだからな。


「ほら、雑談は後だ。星川はこの後もやることがあるんだからな。」


「はいは〜い。わかってるよ〜だ。」


 お気楽な調子だ。

 まあこのくらいリラックスしていた方が、こっちも安心できる。

 ガチガチに緊張した新人とか、見てる方が不安になるし。


【神出鬼没】で距離を置いたら、トドメは星川の仕事だ。

 別に大岩でも落としたらそれで終わりだけど、それだと星川のスキルの威力を確認できない。ダンジョンでは、どんな不足の事態が起きるかわからないのだ。事前に知れる情報は全て知っておいた方がいい。


「スキル【星火燎原】」


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