第50話 入団希望者
星川キララを見たまま、その場で固まっていた俺の肩に斗真が手を置く。
「おいおい、な〜に見惚れてだよ。もしかしてアレか。お前、ファンだったか?ハッハッハ、俺に感謝しろよ。そして敬え、褒め讃えろ。」
馬鹿みたいに斗真が高笑いしている。
こんなのは無視しだ、無視。
俺は真っ直ぐ星川キララの元へと向かい、声をかける。
「なんでこんなギルドに来た?今すぐ別のギルドに移った方がいい。君なら何処にだって入れるだろう。わざわざこんな馬鹿がギルマスやってるとこに来なくても……」
「あはは。やっぱりいいギルドだね。マスターとメンバーがこんなラフに話せてるギルドなんて滅多に無いよ。私、こういうギルド探してたんだ〜。此処を選んだ私の目は間違えてなかったね。これからよろしく。」
どうやら考え直す気はなさそうだ。
「つってもまだ正規採用じゃねえけどな。1週間試してみて、よかったら入るんだと。」
無視されて不貞腐れたのか、そっぽを向いたまま斗真が言う。
「このギルドって探索は貴方と美玖の2人でやってるんでしょ。私も混ざっていいかな?」
「まあそれは別に構わないけど……」
パーティを組むのは問題ないのだが、彼女の戦闘スタイルが気になる。
ぶっちゃけ、俺と金川は絶妙なバランスだ。これで星川キララがどちらかとスタイルが被ったりしてると、正直持て余す。
チラッと金川に視線を向けると、目が合った。
「大丈夫よ。キララのスキルなら上手く連携取れると思うし。」
「え?金川、スキル聞いたのか?」
「まあ、あんたが来る前にちょっとだけ話したから……」
あれだけツンツンしている金川が誰かと会話するとは珍しい。やっぱり女性同士ともなれば会話が弾むのだろうか。それとも、星川キララのコミュニケーション能力が高いだけか。
ちょっと話しただけでもわかる、元気いっぱい天真爛漫な人当たりの良い感じ。
誰だってああいう子は好きになる。
星川キララに視線を向けると、誇らしげにピースをしている。
意味がわからんが話を進めるか。
「俺にもスキル教えて貰っていいか。」
「OK。ぜんぜん大丈夫。私のスキルは【千客万来】と【
スキルは2つ。叡山の情報通り、ランクは2で合っている。
「【千客万来】は敵を集める能力。一見不利っぽいけど雑魚ばかり集まるからレベル上げには持ってこいかな。」
ヘイトを集めるスキルという訳か。
これはパーティ向きのスキルだな。
重装備をさせて、タンクというのも作戦の一つだ。
「【星火燎原】はねえ……うん。見て貰った方が早いかも。」
そう言うとキララは指を鳴らす。
すると、火が出た。
マッチ棒と同じくらいの小さくか弱い火だ。
これは……なんというか……ハズレだな。
そんな俺の心を見透かす様に、キララは口を開く。
「今ハズレって思ったでしょ。このスキルはここからだよ。」
そう言われて、1分後。
火はどんどん大きく膨れて、掛け時計程度のサイズになっていた。
「スキル発動から時間が経過する事に火力を上げるスキル。上限は私にもわからない。でも、結構使えると思わない?」
再度キララが指を鳴らすと、火はふっと煙の様に消えた。
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