4章

第48話 10階層突破

 ミカエラ兄妹がいなくなってから1ヶ月程の時間が経過した。


 現在、ダンジョン10階層。

 以前は晴太に着いて行って、散々な目にあったこの場所。

 今は俺と金川、2人だけで来ている。


「やっと、ここまで来れたわね」


 以前は手も足も出なかったユニコーン。

 斗真が倒したその怪物を前に、俺たちは息を飲む。


 現在、金川のレベルは23、無事ランクアップを果たしてランク3の冒険者に成長した。

 対して俺はレベル18。ミカエラ兄妹と会ってから、一応レベルアップは何度かしたが三進二退のせいで思ったより上がらなかった。

 それでも、ちゃんと一度はランクアップしてスキルを獲得している。


 俺も金川も、新たなスキルを手に入れた。

 あの時の自分たちとは、違う。


「スキルの練習も散々やって来たろ。大丈夫、倒せるさ。」


 冒険者にとって第一関門となる10階層。

 2人だけの力で10階層を突破しなければ、先へは進めない。


「じゃあ、作戦通りよろしく。」


「そっちこそ、ヘマするんじゃないわよ。」


 アイコンタクトの後、俺はワープして身を潜め、隙を伺う。


 視線の先ではユニコーンと金川が一対一で向き合っていた。


「それじゃあ行くわよ。新スキル【百鬼夜行】」


 金川の足元に黒い影が広がると、中から無数の魔物の群れが飛び出した。

 その数はざっと30体。


「行け。」


 その一言で、魔物の群れはユニコーンを襲う。


【百鬼夜行】——魔物を操るといった単純だが、強力無比のスキル。支配できるかどうかは実際に金川が触れてみないとわからないらしく、今操っているのは1、2階層にいる低ランクの魔物ばかりだ。

 だけど、それでも数が集まれば脅威。

 ユニコーンの矛先は、自然と魔物の方に向く。


 よし、狙い通り隙が出来た。


 俺は地面に間隔を開けて2本のナイフを刺し、その後にもう1本のナイフをユニコーンの真上に投げた。


「潰れろ。」


 これはシェリアの右腕をもぎ取った技。

 2本のナイフを使用する事で、そのナイフの間の空間を抉りとる新たな使い方だ。

 前回はシェリアに殴られると同時、肩と指先にナイフが触れたおかげで腕を飛ばせた。

 もし、あいつが肉弾戦を好まないやつなら俺は負けていただろう。


 これはその応用。

 地面に突き刺し、その間の空間をごっそり抉り取り、上空から落とす。

 攻撃力が今一つだった俺も、この方法なら十分な火力を出せる。


 ユニコーンは逃げられないと察知すると、雷撃で降り注ぐ大地を破壊しようとする。だが、質量が違い過ぎた。


 ドォンと激し土煙が舞い、ユニコーンは圧殺される。ようやく、2人だけで10階層を突破出来た。


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