第47話 アイドル

 あの飲み会から2週間後、俺は叡山から呼び出しを受けて【叡智の女神】を訪れていた。

 俺たち【銀狼の牙】【凶暴な鬼人】【叡智の女神】の3ギルドは協力関係を結び、情報交換なんかを行っている。と言っても、俺たち以外は大手ギルドなので情報の集まり方も桁違い。一方的に教えて貰っている立場でしかないのだが、向こうが今はそれでいいというので甘えている状態だ。


 情報は役に立つ。

 メンバーが2人しかいない俺たちで集められる情報には限度があるので、教えて貰えるのは非常にありがたい。


 いつも通りの受付に声をかけ、エレベーターで上階にあるマスター室へと向かう。

 道中、何名かのギルドメンバーと顔をすれ違うが特に絡まれることもなく、軽く会釈して終わり。最近厄介なやつとしか会ってなかった弊害か、いちいち警戒してしまう。


 エレベーターを降りてマスター室への扉をノックする。


「入りたまえ。」


 返事が聞こえたので扉を開けると、椅子に座り書類と向き合っている叡山がそこにいた。


「やあ。久しぶりだね。」


「割と最近あった気がするけどな。」


「そういえばそうか。今日来て貰ったのは面白い話を耳にしたからだ。知っているかい?アイドル冒険者の話。」


 アイドル……冒険者?

 言葉から察するに、アイドルみたいに可愛い女冒険者って事か?

 なんだか気になる単語だ。


「なんだそれは?」


「1ヶ月前までアイドルとして活動していた星川ほしかわキララが冒険者になったみたいだよ。ギルドにはまだ所属していないけど中々に強いらしい。どうやら、以前に冒険者を少し齧ってたみたいで、ランクも2あるそうだね。」


「へぇ。本物のアイドルか。」


 冒険者からアイドルになって、また冒険者に戻った。なかなかに前途多難な人生を歩んでる奴もいるもんだ。


「そんな経歴だと結構歳なんじゃないか?」


「22歳だそうだ。君と同い年だね。16〜17まで冒険者として活動し、その後芸能界へ。アイドルとしての限界を感じ、再度冒険者に戻って来たという感じかな。」


 同い年ねえ。

 って事は同期って訳か。

 俺の同期でまだ冒険者を続けてる奴らには『三進二退』のせいで随分と差をつけられてるから、なんだか親近感を覚えてしまう。


 同年齢・同ランクで頑張ってる奴がいるのか。俺も負けてられないな。


「おや、もう行くのかい?」


「ああ、悪かったな。仕事の邪魔して。」


「呼んだのは私だよ。それに、大した仕事じゃない。また時間があったら飲みにでも誘ってくれ。」


 モチベーションの上がるいい話を聞けた。

 星川キララか……会ってみたいかもな。

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