第45話 審判
シェリア襲撃の翌日。
俺は『
要件はシェリアの件だ。
昨日、ダンジョンからワープで戻った俺は、体に残るダメージで寝てしまった。
シェリアも連れて来てしまったが、まあ仕方ないだろう。他人の、しかも出会ってまもない異性の家だというのにシェリアは図太く寝ていた。
そして現在、『
警察とかそういう面倒なのは全部マスターである鎧武に押し付ける。
なんせ俺は夜中に隠れてダンジョンに潜っていた身だ。早くギルドに戻らなければいけない。警察に拘束されるのはごめんだ。
シェリアを連れて訪れると、ズタボロの俺と右腕のないシェリアを見て、何かを察したメンバーが奥まで案内してくれた。
話が早いというかなんというか……
「お前、こういうこと何回もしてるのか?」
「ダンジョン内では初めてかな。道端でとかだったら10回以上はやってるけど。」
あっけらかんと話すシェリアに呆れてため息しか出て来ない。
「その癖、治せよ。みんな迷惑してるぞ。」
「兄貴は凄いって褒めてくれるよ。」
なるほど…シルフィード、あいつの教育のせいか。
思えば、こいつらは2人で日本に来たと言っていた。もしかして、親がいないのか?
シルフィードを見た時から思っていたが、随分と若い。
顔立ちが日本人とは違うので分かりにくいが、金川と同年代くらいだろう。
幼い頃から兄と2人で暮らし、正しい教育を受けられなかった、か。
まあ、ただの推測でしかないがそれなら多少の納得はいく。ま、それでも許される事じゃないけどな。
「駄目だ。鎧武も困ってるって言ってたろ。」
「別にあの人が困ってもどうでもいいし……ねえ、進も困るの?」
「ああ、困る困る。」
「そっか。じゃあ治すね。」
珍しく素直な返事だ。
まあ、反省してるならそれはいいこと。
シェリアは才能はあるんだ。
性格さえ治せば、いい冒険者になれるだろう。
話している間に、部屋のドアがコンコンと叩かれる。
どうやら、やっと来てくれたみたいだ。
「悪い。待たせたな。」
入って来たのは、鎧武。
これでやっと話が進む。
「こちらこそ、朝早くからすみません。」
「いや、構わねえよ。見たところ、ウチのシェリアが迷惑かけたみてぇだしな。」
ご名答。
それから、俺は昨日の襲撃の一部始終を鎧武に余す事なく伝えた。
「………そうか。わかった。とりあえず通報は構わねえが……進、お前シェリアを家に泊めたんだよな?」
「まあ、成り行きで。」
「シェリアが何歳か…知ってるか?」
「18くらいじゃないんですか?」
いくら若くても、未成年はないだろう。
だけどこの聞き方、嫌な予感がする。
もしかして…本当にもしかしてだが、何か俺はとんでもないミスをしてしまったんじゃないだろうか。
「………16だ。警察はお前も面倒になるそうだが……どうする?別案として、協会で出来る限り重いペナルティを与える+迷惑料ってのもあるが……どっちがいい?」
「………後者でお願いします。」
後日、鎧武に結果を聞くと、協会の人間が出したシェリアの処罰は『半年間の謹慎』及び『ギルドの追放』となったらしい。
謹慎処分で済んだのは、シェリアの年齢による考慮と右腕の欠損というインパクトの強い代償を支払っていたからだそうだ。
右腕を失った少女というのは、悲壮感が漂い可哀想に見えてしまうものらしい。
心が痛まないかと聞かれれば、多少は痛むが自分で治すと言っていたし何か手はあるのだろう。
迷惑料はたんまり貰った。
800万。16歳の少女から奪ったという点だけが尾を引く気分だが、まあ自業自得。
それにしても流石は上級冒険者、一括で支払った辺り、相当稼いでいたのだろう。
あれから、シルフィードは一度だけやって来たが、なんと、驚くことに謝罪した。
いやまあ普通なんだけど、てっきり逆ギレして来ると思っていたので驚きだ。
あれでも少しは成長したのだろう。
それ以来、一度として姿は見ていない。
俺たちのギルドに、ようやく平穏が訪れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます