第42話 戦闘狂
さっきから、嫌な視線を感じる。
品定めをされている様な、そんな感じだ。
この視線はダンジョンに入る前から少し気になっていたが、入ってからはより鋭さを増している。
誰かが俺を狙ってる?
だが恨みを買う様な真似はしていない……とは言い難いな。
数ヶ月前、
金川にも逆恨みしてたくらいだし、俺も恨まれていておかしくない。
いつもより、更に注意深く周囲を観察しながら奥へと進む。
特に異変は感じられない。
やはり気のせいか?
と思った矢先だ。
不意に背後から、奇襲が迫る。
警戒していたおかげで事前に気づけた俺は、その場から飛び退く事で回避する。
「へぇ、やっる〜。手は抜いたけど、ランク2の冒険者が躱せる一撃じゃなかったんだけどなぁ。」
「はぁ…ずっとこれを狙ってたのか?シェリア。」
視線の正体はシェリアだった。
思い返してみれば視線を感じ出したのはシェリアと出会った後から。
まさかこいつが俺を狙ってるだなんて思いもしなかったが…一体なぜだ?
「なんで俺を狙う。俺たちは今日初めて会話した。面識も一度だけだ。俺はお前に何かしたのか?」
「別に。ただ戦いたかっただけだよ。私、強い人見つけると戦わずにはいられないんだよね。進が
シェリアの顔が、光悦とした表情へと変わる。
「いいのか?こんな所で冒険者同士が戦って。俺が通報したらお前、資格剥奪されるぞ。」
「別にいいよ。警察はダンジョン内に入って来ないから、戦いの邪魔はされないし。それに戦いたい時に戦って何が悪いの?資格剥奪はまあ嫌だけど…また取り直せばいいし。」
これが鎧武が言ってたシェリアの厄介なところかよ。
まさしく戦闘狂。
後先考えず、好きなタイミングで襲いかかる迷惑極まりない性格。
シルフィードといい、こいつら兄妹はどうしてこうも面倒なんだ。
対話は…意味がなさそうだ。
あいつの顔がそう物語っている。
俺は、バッグからナイフを取り出した。
「それが進の武器なの?腰に刺してる剣は?」
「素手相手に剣なんて使えるか。」
「へえ、そっか。それさ…私のこと、ナメてるってことだよね。」
一瞬の瞬きで、シェリアの姿が消えた。
同時、腹部に強烈な痛みは走る。
体はくの字に曲がり、猛烈な勢いで吹き飛んでいく。
地を転がる。まだ、止まらない。
どれだけ飛ばされたか分からないが、大きな岩石に衝突し、勢いは止まった。
(何だ今のは…全く見えなかったぞ。)
痛む体を起こし、立ち上がろうとしたその時、こちらに迫る気配を感じ取る。
(——マズい、また来る。)
頭で考えるよりも先に、体が勝手に動いていた。
シェリアの拳を辛うじて剣で受け止める。
なりふり構っていられない。
本能で、俺は剣を抜いていた。
「どうせ抜くんだったら最初から抜いてれば怪我しなかったのに。」
眼前には、好戦的な笑みを浮かべたシェリア。
どうやら、今からが本番のようだ。
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