第38話 シルフィード

 シルフィードが俺たちのギルドに加入(?)してから2日後。

 現在、俺と金川、それにシルフィードの3人はダンジョン5階層に来ている。


 何を言っても聞く耳を持たないシルフィードを説得する事は、俺にも斗真にも出来ず、取り敢えずギルドに入れるかどうかは置いといて、実力を図ることになった。


 どうせ勝手にギルドに来るので、それならせめてクエストを手伝わせた方がまだマシだ。


「シルフィード、取り敢えずお前のランクとスキルを教えて欲しい。連携に重要だからな。」


「では、改めて自己紹介します。僕の名前はシルフィード・ミカエラ。ランク2のレベル15。スキルは【自業自得】と【九死一生】です。2つとも使い勝手が悪くって……」


 スキル【自業自得】

 日頃の行いを元にステータスがアップしたりダウンしたりする能力。

 簡単に言えば、善行を積めば強くなり、悪行を行えば弱くなるスキルだそうだ。


 そしてもう一つ、スキル【九死一生】

 異常な生命力を得られるスキル。

 生命力は強くても、痛みはあるのであまり意味はないらしい。


 お世辞にも強い能力とは言い難いな。

 戦闘向きとは思えないし、これでよく『狂暴な鬼人バーサクオーガ』の入団試験に一度は受かったものだ。


「それじゃあ試しに戦ってみてくれ。俺らは後ろから見とくから。危なくなったら加勢する。」


 取り敢えずは彼の戦い方を見てからだ。

 そうしないと連携も何もあったもんじゃない。

 因みにだが俺と金川は、ここ数ヶ月の探索でレベルアップを果たしていて、俺がランク2のレベル17。金川はランク2のレベル19。

 5階層までのモンスター相手なら、余力を持って対処できる。


「あんまり戦闘は得意じゃないんだけどなぁ…」


 嫌々ながらシルフィードが歩いて行く。

 彼の向かった先にいるのは二足歩行のトカゲ型モンスター、リザードマン。

 素早い動きが特徴的であり、稀に冒険者から奪い取った刃物を扱う個体もいる為、注意しなければいけないモンスターだ。


 まあ、今目の前にいる奴は武器を持っていないから、普通のリザードマン同様ただ動きがちょっと早いだけ。シルフィードの実力を測るにはちょうどいい相手だろう。


 シルフィードは、リザードマンを前に立ち止まると息を整えた。


「よし、行くぞ。スキル【自業自得】。」


 そう叫ぶと同時にシルフィードの体から光が溢れ出た。


 あれが自業自得。

 身体強化のような力か。

 ああやって、身体能力を向上させて戦うのがシルフィードの戦い方なのだろう。


 武器は持たず、左腕を前にして半身の構えをとった。


 体術がメインなのだろうか?

 鍛えてる感じもないし、得意だとは思えないが大丈夫なのか?


 そんな不安を覚えていると、リザードマンがシルフィードに襲い掛かった。

 シルフィードに接近し、回転で威力をつけた尾で攻撃をする。

 まあ、なんて事ない、リザードマン定番の攻撃パターン。

 さあ、シルフィード。どう対処する?


 迫り来る尾。

 次の瞬間、シルフィードは宙を舞った。


 リザードマンの動きに反応出来なかったシルフィードは、勢いそのままに叩き込まれた尾を避けること叶わず吹き飛ばされてしまった。


 運良く俺の元まで飛ばされて来たので、地面に落ちる前にキャッチする。


「おい、大丈夫か?」


 そう声をかけるがシルフィードは心ここに在らずといった感じで、自身の右手を見つめながらぼそっと呟いた。


「やっぱり駄目かぁ。」


 駄目?一体どういう意味だ?

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