第32話 秋風冽冽
【明神斗真サイド】
ユニコーンが放つ電撃を、避ける事なくその身で受け止める。
「あぁ〜、やっぱ効くなぁ。」
気持ちいい。
電気マッサージみたいで肩凝りが治りそうだ。
暫くの間、電撃を受け続けていた訳だが、どういう訳か電撃が止まってしまった。
「あり?おい、もう終わりかよ。」
せっかくいい感じにほぐれて来たのに…
まあ、いいか。
この感じだと、体は鈍ってるがユニコーン程度なら余裕だ。
ちゃちゃっとケリつけてギルドに帰ろう。
「【春夏秋冬】、秋。」
俺の起点に、風景が変化し紅葉が舞う。
【春夏秋冬】
春、夏、秋、冬、4つのフィールドの中から選択した1つを展開するスキル。
今回、選んだのは秋。
鮮やかな紅葉が舞い散る、幻想的な光景が特徴だ。
まあ、当然ただいい景色を見れるだけのスキルではない。
秋のフィールドの特徴は、舞い散る紅葉による視覚妨害、そして冷たく厳しい強風だ。
電撃が効かないと判断したユニコーンは、近距離戦を仕掛けようと接近して来る…が、紅葉を操り妨害する。
視覚を遮り、その隙に距離を取ることで接近を許さない。
(これだけ離れれば十分か。)
ユニコーンから距離を置きつつも、進や美玖からも離れていた。
これから使うスキルの巻き添えにしてしまわない様に。
折れた剣を水平に構え、刀身に手を添える。
すると、風が刀身を覆い、少しずつ威力を増幅させていく。
(あー、こりゃ一発で壊れるな。ま、わかってたから使い捨てで来た訳だけど。)
準備は整った。
あとはこいつを振り向くだけだ。
「さて、行くぜ。【
振り抜いた剣の軌跡は風の刃となり、軌道上にいたユニコーンの首はゴトッと音を立てて地に落ちた。
「うっし、一件落着っと。帰るぞ、お前ら!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1週間後
ギルド『
「しっかしお前、その程度で済んでよかったなあ。」
ギルドのマスターである斗真が笑いながらミイラ男に話しかける。
「笑い事じゃねえっての。全治1ヶ月だぞ。当分の間冒険者としての活動は出来ないし…はぁ…折角最近はいい調子だったのになぁ。」
このミイラ男の正体は前山進。
ユニコーン戦の後、妙に痺れが残ると病院に行った進は全治1ヶ月と診断された。
分散された微弱な電撃だったとはいえ、ランクの低い進に耐えられるものではなく、体中の至る所がボロボロになっていたのだ。
「こんな時、治療系のスキルを使える仲間がいたらなぁ。」
「協会に行って治療して貰えば良いじゃねえか。」
「馬鹿言うな。あんな高額なの俺が払える訳ねえだろ。」
治療系スキルとはその名の通り、怪我や病気などを治すスキルだ。
治療系スキルを使える冒険者は稀少であり重宝されている為、基本的にダンジョンには出る事はなく協会と呼ばれる組織に属している。
スキルの効果にもよるが、最低でも5万円からと非常に高額で、そう簡単に手が出せるものではない。
そもそも怪我なんて時間が経てば治るのだ。
そんな金、払ってなるものかと進は思っている。
「そういえば雨太はあの後どうなったんだ?」
「ああそっか。お前、気ぃ失ってたもんな。あの子なら自分のギルドに帰ってったぜ。助けてくれてありがとうってよ。そういえばなんかあったら手を貸すって言ってたなぁ。」
そうか…無事なら良かった。
金川から聞いた話だと、雨太は叡山のギルドだったな。
あのギルドとは何かと縁がある。
その内、また会えるだろ。
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