第31話 危急存亡
金川が助けに来てくれた。
体が痺れているせいで姿は確認できないが、声からして間違いないだろう。
だが、こう言っては何だが金川では来てくれたところで助けになるとは思えない。
いや、【魑魅魍魎】を使わせればなんとかなるかも…
「ちょっと、大丈夫?」
なんて考えている内に、いつの間にか金川は俺の側まで来ており、顔を覗き込まれていた。
「なっ、ばか!敵からから目を離すなよ!お前もやられるぞ!」
「大丈夫よ。マスターが相手してるから。」
(ん?マスター…?マスターって、ギルドマスターだよな。一体どこの…)
普通に考えれば所属しているギルド、まあつまり俺たちの所属ギルド『
金川は数ヶ月前まで『
だとするとそっちのギルドマスターである叡山が助けに来てくれたとか……
痺れる体を無理矢理動かして、ユニコーンと戦っている人物に目を向ける。
無精髭にボサボサの短髪、身に纏っている装備品も全てがボロボロで、剣に至っては刃こぼれどこか刀身の3分の1が折れている。
あれではとてもユニコーンと渡り合えるとは思えない。
それなのに、だ。
斗真は「おっとっと」「あっぶねー」などと声を上げはするものの、ユニコーンの攻撃全てを紙一重で避け、渡り合っていた。
「あんたの考えている事はなんとなく分かるけど、心配無用よ。マスターは強い、私たちなんかじゃ足元にも及ばないくらいにはね。」
口が悪く、他人をそうそう褒めたりしない金川がここまで言うとは…
昔は有名な冒険者だったって噂はもしかして本当なのかもしれない。
考えずとも噂の真相は今ここで判明する。
いい機会だ。
俺たちのギルドマスターの実力、しっかりとこの目で見させて貰おう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【明神斗真サイド】
(あー、めんどくせぇ。何でこんな事になったんだか…)
【
俺のスキルの一つで、俺及び俺の仲間(ギルドメンバー)の危機を知らせる能力がある。
警報みたいな感じで頭の中で鳴り響きやがるから、それが鬱陶しくて出来る限り仲間を減らしたし俺自身もダンジョンに潜らなくなった。
その甲斐あってか数年に渡り平穏な日々を送れた訳だが……進の危機で久方ぶりに発動しやがったって訳だ。
本当は美玖だけを送り込むつもりだったが、なんせランクが足りねえ。
【危急存亡】はどこで危険な目に合ってるか脳内に映像も差し込まれるから居場所も知ることが出来る。
ったく、進の野郎は何で10階層なんかに行きやがったんだか。
危機管理も出来ないバカではなかった筈なのに…
まあ、という訳で一応美玖も連れて10階層まで遠路はるばる助けに来てやった訳だが…やっぱ面倒くせえな。
「だりぃ…さっさと片付けるかぁ。」
武器屋で無料で貰って来た廃棄品の剣を構える。
なに、ユニコーン程度ならこいつで十分。
さあて俺の腕、鈍っててくれるなよ。
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