第30話 救援?
「ヒィヒィーン!!!」
いななきと共に、角から打ち上がった電撃が雨の様に降り注ぐ。
一撃一撃は細く、見るからに威力も弱い。
だが、広範囲に渡るこの攻撃は、全てを避け切るにはあまりに数が多過ぎた。
(ちっ、掠ったか。)
右腕に一発、電撃が掠った。
ただそれだけだったが、不思議と右腕に痺れを感じる。
(マズい…痺れて上手く動かせない。)
利き手をやられてしまった。
完全に動かないという訳ではないが、力が抜ける。
雨太は無事だろうか、と降り注ぐ雷を避けつつも視線を向けると、今にも直撃しそうな雨太の姿が目に映った。
「間に…合えっ!!」
【神出鬼没】を発動し、残る左腕を犠牲に雨太を守る。
これで俺は両腕を使えなくなった…が、雨太がやられてしまうよりマシだ。
「進さん…」
「気にするな。それより、ばら撒いて来てくれたか?」
「はい。言われた通り、出来るだけ均一に距離を開けて進さんの持ち物はこの部屋中に置いて来ましたけど…これでよかったんですか?」
「ああ、上出来だ。あとは晴太が回復するまで隠れてろ。」
雨太には俺の荷物をこのボス部屋の至る所にばら撒いて貰った。
これで【神出鬼没】の移動先は激増し、最大限の効果を発揮する事ができる。
情けない話だが、俺にはユニコーンに勝てるビジョンが浮かばない。
遠距離には防御不可の雷撃、近距離には破壊力抜群のツノによる攻撃、ユニコーンを倒すには最低限、この2つに対処できなければ話にもならないだろう。
どちらか片方だけなら、ギリギリ対処できる…が、両方となると今の俺には無理だ。
今の俺に出来る精一杯は、晴太が回復するまでの時間稼ぎ。
攻撃は遠距離の雷撃一本に絞らせて、出来る限り逃げ続ける。
ユニコーンが雷撃を放ち、俺が【神出鬼没】で回避する。この繰り返しだ。
【神出鬼没】も無闇矢鱈と飛べばいいというものではない。
攻撃速度の速い雷が相手ともなれば、ワープ先を読まれてしまうと次のワープは間に合わなくなる。
一つ一つ慎重に、ユニコーンの視線などから攻撃を先読みしてワープ先を選び抜く。
(晴太はまだか…)
何度目かも分からない応酬で、そろそろ自身の限界を感じて来た俺は隠れている雨太に視線を向けてしまった。
それが命取りになる。
「ヒィヒィーン!!!」
細く、鋭い雷。
威力だけなら見るからに小規模。
だが、ユニコーンの放ったこの雷は今までとは比べものにならないほど速く、一瞬視線を逸らしてしまった俺に躱す事など出来なかった。
(しまっ——)
全身に電流が走る。
痛みはない。
ただ、麻酔を受けたみたいに感覚がなく、俺の体はだらりと力を失い、倒れた。
ズンズンと重い足音が近づく。
見なくても分かる。
ユニコーンが近づいて来たのだ。
俺にトドメを刺すために。
(クソッ……ここまで…か。)
晴太はまだ回復していない。
雨太の叫び声が聞こえるが、来ても共倒れになるだけだ。
せめて俺がやられてる間に逃げてくれたらいいが……
生きる事を諦めかけたその時、奇跡は起きた。
「動かないで!!」
聞き覚えのある少女の声と共に、3本の矢がユニコーンに放たれる…が、矢は当たる前にツノで払い落とされた。
「全く…私に黙って行くからこんな目に合うのよ。助けに来てあげたわよ。」
この上から目線で高飛車な物言い、間違いない。金川美玖だ。
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