第28話 晴太の力

 『ダンジョン10階層』


 ダンジョンには10、20、30などの10の位の階層にダンジョンボスと呼ばれる非常に強力な力を持ったモンスターが出現する。

 出現場所は決まっていて下層へと続く通路のある最後の部屋の前。

 下層に行く為にはこのダンジョンボスを倒す必要がある。


 過去にこのボスを無視して11階層へ行こうと心掛けた冒険者がいたが、ボスは先へ進もうとする者を優先的に狙うようで、集中して狙われた結果死亡してしまったらしい。

 この事から冒険者の間ではボスは確実に倒してから下層へ進むようにと伝えられている。


 そして今、俺と晴太はそのボスが出現する部屋の前まで来ていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おい、まさかお前…ボスに挑む気じゃないよな。」


 晴太は確かに強い。

 だけどボスとは本来、最低でも4人以上のパーティを組んで討伐するものだ。

 噂では、ギルドメンバー総出で挑んだが全滅したなんて話も聞いた事がある。

 ソロで挑んでいい相手じゃない。


「勿論そのつもり。その辺の雑魚じゃつまんないし。大丈夫だって、おっちゃんはただ見ててくれればいいからさ。」


 晴太はそれだけ告げると、勢いよく扉を開けて部屋の中へと突撃してしまった。


「待て、晴太!」


 俺の声が聞こえていないのか、晴太の足は止まらない。

 

 クソッ!!

 少しくらいは言うこと聞けよ!


 俺は仕方なく後を追って、ボス部屋へと突入した。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 戦闘音が響いている。

 既に晴太とボスは戦っているみたいだ。


 部屋の中で待っていたのは額に生えた巨大な角が特徴的なモンスター。

 一角獣、ユニコーンだった。


 晴太は『フレイムメイル』を展開しながら、俺が拾った白銀の短剣を右手に、形が全く同じ黒色の短剣を左手に、二刀の短剣を巧みに扱いヒット&アウェイの要領で戦っている。


 対してユニコーンは短剣二刀流を意にも介さず、巨大な角を振り回し暴れていた。

 フレイムメイルの炎を耐えている事からも、ユニコーンのレベルの高さが伺える。


 振り回される角を掻い潜り、少しずつダメージを与え続ける晴太。

 このまま行けば勝つのは間違いなく晴太だ、と思ったがそう簡単にはいかない。


「ヒヒーン!!」


 攻撃が当たらない事に苛立ったのか、ユニコーンは角を地面に振り下ろす土煙を上げると、その隙に空へと駆けた。


「うわっ……っと……あっぶねぇ〜」


 晴太が土煙を手で払う。

 その隙をユニコーンは見逃さなかった。

 何やら角が黄色く発光し出したかと思うと、次の瞬間、その光を晴太に向けて放つ。


 遠目からだが分かった。

 あの光の正体は電撃だ。


 電撃は鉄製の道具では防御不可の為、非常に厄介な攻撃。

 避ける一択なのだが、攻撃速度自体も非常に速いのでそれすらも困難である。


 そんな電撃による一撃。

 だが、晴太はそれを目視してもなお、笑っていた。


「お、電撃だ。でも…そんなの効かないよっ……と!」


 両手を強く握り、気合いを入れると身に纏っていた『フレイムメイル』の火力が上がった。


 炎と雷の衝突。

 勝ったのは、炎だ。


「あれ?これで終わり?まあいいや。それなりに楽しめたし、そろそろ終わりにしよーっと。」

 

 短剣を逆手に持ち、炎を両手に集中させる。

 そのまま螺旋を描くようにその場で短剣を振り抜くと、巨大な炎の竜巻が発生した。


「行っくぜえ!奥義、『サンシャイン……ストーム』!!」


 炎を竜巻はユニコーンを呑み込んだ……のも束の間、竜巻は一瞬にして消えてしまう。


「あっ、やべっ。時間切れかも。」

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