第27話 天才少年
「俺は晴太!雨太とはなんていうか…双子的な感じ?一応俺の方が兄ちゃんって事になってんだ。よろしくな!」
ジェネラルゴブリンを倒した後、雨太の姿をした少年に何者かと尋ねると、彼はそう答えた。
「晴太?どう見ても雨太だけど……お前が兄なら雨太はどこに消えたんだ?」
「雨太なら俺の中だよ。俺ら、【二重人格】ってスキルの影響で人格が2つあんだよね。」
【二重人格】
その名の通り2つの人格を持つスキル。
このスキルは強大な晴太の力を抑え込む役割を持っていて、晴太の力が回復するまでの間、第2の人格である雨太と入れ替わる。
雨太は基本的に戦闘は出来ないが、身の危険を感じた場合に限り、その身に溢れる膨大な力を使いスキルを自動で発動する様になっている。入れ替わりのタイミングはある程度なら任意で行う事が出来るそうだ。
「人格が2つ…って事は、俺とお前は初めましてって事になるのか?」
「う〜ん、雨太と記憶は共有してるからおっちゃんとの会話は全部わかるし、殆ど同一人物って考えてくれていいよ。」
そう言いながら、満面の笑みで手を差し出す晴太。俺はその手を取った。
「ところでさあ…俺、もうちょい肩慣らししたいんだけど付き合ってくんない?」
雨太と比べて晴太は少し生意気な感じがする。だが、それに見合う実力を持っているのもまた事実だ。ジェネラルゴブリンを最も容易く倒したあの力…せっかくの機会だし近くで見せて貰うか。
「いいけど10階層までだぞ。俺のランクだと流石にそれ以上はキツい。」
「やりぃ。ま、多分1人でも大丈夫だからおっちゃんは見てるだけでいいよ。」
「そのおっちゃんって言うのやめろ。俺はまだ22だ。」
「十分おっちゃんじゃん。俺14だし。」
14歳って…偶にいるんだよなぁ、才能に満ちた学生プロみたいな奴が。
とうとう冒険者にまでそれが現れる時代が来たなんて……なんか、こんな事考えるなんて本当におっさんになった気がして来た。
俺みたいなやつはのらりくらりと適当なクエストで小銭稼ぎでもして、後はこういう若者に譲るべきなのかも知れないなぁ。
なんて冒険者の今後について考えていると、晴太が先を歩いていた。
「おーい、おっちゃーん。何ぼーっとしてんの!早くしないと置いてくよ〜!」
全く…俺の方が付き合ってやってる立場なのに置いていくって……
まあ、ぼーっとしてた俺も悪いんだけど。
「ちょっと待ってろ。すぐ行く。」
俺たちは更に下層への道を進み始めた。
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