第23話 最悪の事態

 自己紹介の後、流れで俺たちは一時的にパーティを組む事になった。


 6階層は俺にとってまだ安全地帯ではない。

 普段は金川と2人だが、今は1人。

 早々に帰ろうとしたのだが、この雨太という少年がそうさせてはくれなかった。


 どうやら雨太は、パーティメンバーにある素材を取ってくる様に命じられ、2週間前から毎日1人で探索しているらしい。

 失態を犯した罰らしいが、あんまりだ。


 スキルを見た感じ、実力は雨太の方が上だし大丈夫だとは思うが、流石に見捨てられないので俺は協力を申し出て、一時的なパーティを組んだという訳だ。


 目的であるモンスターが出るのは8階層。

 ということで、俺たちは8階層に来ている。


「それにしても……あんまりモンスター出なかったな。」


「そうですか?僕はいつもと変わらないと思いますけど…」


 雨太はこう言うが、6〜8階層までの道中、片手で数えられるくらいしかモンスターと出会っていない。

 1〜5階層ではこの5倍は遭遇する。

 まあ、始めて訪れた階層ではあるので、もしかしたら下層に行くほどモンスターの出現率は下がるのかも知れないな。


 なんて考えながら歩いていると、目的のモンスターのお出ましだ。



 緑色の肌に鋭い手足、筋肉質な肉体の上には人間と同じ様に鎧を着ている。

 下層の定番モンスター、ゴブリン種に中でも特にレアなモンスター。

 知性を持ち、他のゴブリンを統治するその名も『ジェネラルゴブリン』


 ジェネラルゴブリンを守る様に、20体程のゴブリンが囲んでいる。

 合計21体のモンスター討伐。

 大掛かりな仕事になりそうだ。


 戦いの基本は先手必勝。

 ゴブリンたちはこちらに気付いていない。

 仕掛けるなら——今しかない。


「雨太、さっきのスキル使ってくれ。」


 つい先ほど見た、大量の水で敵を攻撃するスキル。

 あれならゴブリンを一掃できるかも知れないし、それが無理でも敵の分散は確実。


 そう思って指示を出した訳だが、雨太は首を横に振る。


「む、無理です。僕、自分の意思でスキルを使うことが出来ないんです。さっきみたいに命の危機を感じないと僕のスキルは発動しません。」


 ………は?なんだと!?

 それ今言うか?普通。


 とんでも発言そのものもそうだが、そんな重要な事は一時的とはいえパーティを組む時に教えて欲しかった。

 知ってたらこんな危険な階層まで来なかったのに。


 そんな事を思っても、後の祭り。

 来てしまったものは仕方がないし、悔やんでいてもこの状況は変わらない。


「他のスキルも全部自分の意思では発動できないのか?」


「……はい。すみません。」


「スキルなしで、どれくらい戦える?」


「ス…スライムなら…なんとか…」


 1階層クラスじゃねえか!


 最悪だ。

 俺1人でジェネラルを含むゴブリン21体を相手にしなきゃいけないなんて…

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