第20話 評価
【
進がいなくなった後、叡山を囲むように八尋雅康・久々利莉音・阿頼耶光流の『
「残念でしたね。彼は伸びますよ。うちに来たら僕も楽できたのに。」
「うむ。あの者は非常に良い太刀筋をしていた。実に惜しいな。」
「良いライバルが出来ったって事でええじゃないか。負けてられん。俄然、やる気が出てきたのお!」
雅康の豪快な笑い声がこだまする。
各々が進を話題とした雑談を交わす中、叡山は何も発さない。
どうしたのだろう、と3人が叡山に視線を向けていると突然、腹を抱えて笑い出した。
長年の付き合いだが腹を抱えて笑う姿など一度も見たことがない。そんな叡山に3人は戸惑いながらも代表として光流が声をかけた。
「叡山さん。どうしたんですか?」
「ああ…いや、すまない。思い出し笑い、とでも言ったところかな。全く、進め。最後にとんでもない事を言ってくれる。」
とんでもないこと?
それはなんだと3人が思っていると、叡山はすぐに説明を始めた。
「山岸隆二のレベルを覚えているかい?」
「確か先月、ランク4に上がってましたよね。レベルは……32、でしたっけ?」
「正解だ。じゃあ次に、そんな山岸隆二を倒した進のレベルはいくつと見る?」
「まあ、普通に考えて隆二以上。それなりに実力差も見えましたし40前半…ランク5クラスの冒険者でしょうね。」
「光流はそう見たか。……君たちも同じかい?」
残る2人に視線を向けると、軽く頷いて肯定の意を示した。
「そうだね。僕も同意見だ。ランク5、ゆくゆくは君たちに並ぶ幹部級の強さだと見ていたんだが……進のランクは2だそうだ。参ったよ。ギルドマスターともあろう人間が、まさかここまで見る目がなかっただなんて。」
叡山の台詞に3人は驚きを隠せなかった。
通常、ランクが一つ違うだけで強さは相当変わる。ランク2の差がある状態で圧倒するなんて事は信じられない所業だ。
「それは……本当なのか?もしかしたら彼が嘘をついただけかも知れない。我々とはギルドが違うんだ。事実を教える必要もないだろう。」
莉音は進の言葉を疑った。
実は前山進はランク4以上の冒険者とでも言われた方が、納得がいくからだ。
しかし、そんな莉音の言葉を叡山は否定する。
「いや、その可能性は低いだろうね。私が進の立場で嘘をつくとしたら、こんな馬鹿げてる嘘はつかない。もっと現実味を持たせてランク3と答えるね。それに…そもそも嘘をつく理由もないだろう。」
ランクを隠したいのなら、そもそも言わなければいい。
さっきの進の発言は、うっかり溢れてしまったものだとしか思えない。
「全く……先が楽しみだ。」
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