第17話 勝者

 信じられないものを見たかの様な目で昭和ヤンキーは俺を見つけている。


「ど……どうしてだ。俺のスキルはお前に直撃したはずだ。」


「そんなに気になるならもう一発撃ったらどうだ?」


 安い挑発だと自分でもわかっている。

 だが、昭和ヤンキー相手ならこれで十分効くだろう。


 昭和ヤンキー君は見た目通りというべきか、精神面が恐ろしく幼稚だ。

 恐らくレベルなどは俺が負けてる。

 だけどこうも俺の思惑通りに動くのは思考回路がわかりやすく単純だから。

 頭を使って戦えばいいものを最初から俺を下だと見くびっていたヤンキー君は馬鹿みたいに剣を振り回すだけ。

 仕舞いには早々に切り札であるスキルを使ってしまうと来た。

 使うにしても確実に当てれるタイミングとかもう少し狙い時があっただろうに。


 まあ、相手はそんなヤンキー君だ。

 どんなに安い挑発だろうと煽り耐性のない彼なら思う様に釣れるはず。


「テメエ…いい気になってんじゃねえ!!今度こそ当ててやる!」


 案の定、ヤンキー君は青筋を立てて怒りを露わにするとまたしても【三位一体】を放つべく準備をし始めた。


「何度やっても無駄だって。」


 事前に投げたナイフは4本。

 それぞれを東西南北の四方向にバラけて設置している。

 選べるワープ先が4ヶ所もあるこの状況で俺に攻撃を当てたいならワープ先を先読みするか、全方向攻撃でもやらない限り不可能だ。

 まあ、そんな芸当がこの昭和ヤンキーに出来るとは思わないが。


 呑気に【三位一体】の完成を待つ。

 無闇にワープしているとワープ先がバレてしまうかも知れない。

 こういうのは出来る限り攻撃が当たるギリギリで飛んだ方がいい。

 その方が確実に避けれるし、相手も自分の攻撃に俺が隠れてるから何をしたか分からない筈だ。


「食らえ、【三位一体】!!」


 さっきと全く同じ攻撃だ。

 いやはや、威力は高いだけに本当に使い手の頭が悪くて残念に思える。


 俺は【神出鬼没】を発動して攻撃を避けると、ワープ先に落ちているナイフを拾い上げてそのまま昭和ヤンキーの足元に投げる。


「な!?テメエ…いつの間に…」


「さあね。てか、隙だらけだぞ。」


 昭和ヤンキーの足元に投げたナイフへ【神出鬼没】を使ってワープすると、スキルを放った後の隙だけの体に剣の柄を思いっきり打ち込んだ。

 無防備のヤンキーは不意をつかれたせいか、力なく地べたへと倒れ込んでしまった。


 その様子を見た受付嬢は、はっきりと会場に宣言する。


「勝負あり!勝者——ギルド【銀狼の牙フェンリルファング】所属、前山進!!」

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