第16話 三位一体
遂に本気を出したのか目の前でスキルらしきものを使い出した昭和ヤンキーを見据えて、俺は驚嘆していた。
あいつ……頭に血が上りすぎだ。
絶対これが決闘だってのを忘れてるぞ。
あのスキル、どう見ても人に向けて出す技じゃない。
炎・水・雷らしき物質の塊が1つの塊になろうと集まっている。
まだ融合していないというのに塊から溢れ出る風圧で近寄れない。
(アレをまともに食らったらやばい。)
あそこまで危険なスキルなら止めるだろうと思って観覧している叡山をチラッと見るが止める様子はない。
どこか楽しみにしている様な節さえ見えるニヤけた顔でこっちを見ている。
あれくらい自分で対処しろって訳か。
叡山は俺の【神出鬼没】を一度見てるから避けれると思ってるんだろうな。
まあ、その通りだが。
【神出鬼没】
便利で俺も多様しているこのスキルだが、忘れてはいけないのはどこにでもワープ出来る訳ではないという事だ。
使うには必ずマーキングが必要になる。
俺は腰に巻いている皮のベルトポーチから小さなナイフを4本取り出し、それらを無作為に四方へと投げつけた。
「はっ!バカが!どこ狙ってやがる。びびって手が震えちまったか!」
的外れな方向へ飛んで行ったナイフを見て、昭和ヤンキーは勝利を確信したのか高笑いをし始めた。
「はぁ…いいからさっさと撃てよ。時間の無駄だ。」
「まったく、ナメた野郎だぜ…。人をコケにしやがって…降参すれば見逃してやろうと思ってたが止めだ。テメエは殺す。」
三属性が完全に融合し、一つの大きな球体となった。
「こいつは俺の最強スキルだ。当たれば塵すら残さず消し飛ばす威力を持っている。こいつで——終わりだ!!!」
(おお、思ったより速いな。まあ、当たらないから意味はないけど。)
それなりのスピードで迫って来る球体を前に棒立ちしたまま、直撃の瞬間に投げたナイフの位置にワープした。
大きな爆発が起きる。
地面は抉られ、俺が立っていた場所は消し飛ばされていた。
「はっ!見たか!この威力……どうだ!これで俺の勝ちだ!」
【三位一体】が直撃したと思い込んで勝利を確信している昭和ヤンキーは闘技場を出て行こうとした。
(いいぞ、そのまま出れば俺の場外勝ちだ。)
しかしその時、会場内に叡山の声が響き渡る。
「何処へ行く?まだ決闘は終わっていない。君の降参…という事でいいのかい?君は少々視野が狭過ぎるみたいだな。よく周りを見渡すといい。」
叡山に促され昭和ヤンキーが渋々といった様子で周囲を見渡してしまったせいで死角で息を潜め、今か今かと場外へ出るのを待っていた俺と目が合ってしまった。
「は?なんでお前が…」
「あいつまた余計な事を……そのまま出て行かせりゃ俺の勝ちだったのに。」
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