第15話 片桐の思惑
【片桐叡山サイド】
闘技場の最上部にある一室。
ガラス張りの窓から2人の戦いを観察していると何者かが部屋の中に入って来た。
私は背を向けたまま、彼らに語りかける。
「君たちを呼んだつもりはないが……どうして此処に?」
「そう堅いことを言わんで下さい。儂らもあんたが気にしとるっちゅう男を見とうなったとです。」
年寄り臭い話し方が特徴的なこの男の名は
30代半ばという年齢だが少年の様に無邪気な笑みを浮かべていて、今も食いつくようにガラスに張り付き2人の戦いを観戦し出す。
「クエストも終わって暇だったのでな。近頃はこのギルドの風紀も悪くなって来ている。私が躾けてやろうと思っていたら見知らぬ男に先を越された。ならばせめて行く末だけでも見ようと思ったまでだ。」
160cm後半の長身にすらっとしたモデル体型、まさしく女性の理想ともいえるスタイルと美貌を持つ女性、
「へえ、結構善戦してますね。隆二は若手の中じゃトップなのに……あの人、どのギルドメンバーですか?」
金髪碧眼の美少年、
『神童』の二つ名を持っており、全冒険者最強候補の一人。
光流の視線の先には2人が剣を打ち合う姿が映っている。
両者の実力は互角。
力は隆二の方が上だが進はそれをカバーする様に剣技で補っていた。
「あの男、なかなか出来るな。近頃はレベルアップすると自然と強くなれるので技を磨かん奴が多過ぎる。その点、あの男は太刀筋に努力が見える。素晴らしい。」
「へえ、莉音が人を褒めるなんて珍しい。彼を気に入ったのかい?」
「まあな。ああいう努力出来る人間は尊敬に値する。同じ人間として敬意を払わねば。」
そんな雑談を聞いている間に、どうやら戦況に変化が起き始めた様だ。
進展しない状況に我慢の限界が来たのか、先に仕掛けたのは隆二だ。
「おお!久しぶりに見るのお。ありゃ隆二のやつ、スキルを使うつもりじゃな。」
隆二の周りに炎・水・雷の塊が漂う。
それを見た光流は少し険しい顔になった。
「マズイな。隆二の【三位一体】は異なる三属性を一つに合体させる事で爆発的に威力を増幅させた魔弾を放つスキルだ。彼では耐えきれない。僕、止めに行きますね。」
慌てて決闘を止めに行こうとする光流の手を私は掴み止めた。
「叡山さん!?何をしてるんですか、急がないと彼が!」
光流は私の拘束を振り解こうと抵抗するがびくとも動かない。
それもその筈、光流では振り解けないくらいの力で握っているから。
「見ておくと良い。面白いものが見れると思うよ。」
私はそう言って軽く微笑むと掴んでいた手を離し、観戦に戻った。
(この戦いはこの目で見ておきたい。私の予想が正しければ進は、とても面白いものを見せてくれるだろうから。)
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