第11話 あれから

 あの事件から1ヶ月が経過した。


 金川を連れ戻しに来た男性3人組はあの片桐とかいうギルドマスターが処罰し、最終的には捕まったそうだ。

 ギルド『叡智の女神ソフィアデア』から出された捜索隊は割とすぐに出向いたらしいが俺の居場所を割り出すのに時間がかかったようで見事に入れ違いになってしまった。

 まあ、あのままあそこに居ても助けて貰えたっぽいが【神出鬼没】は使い勝手のいいスキルだし結果オーライだろう。


 一方、金川から俺がモンスターの群れに襲われていると聞いた斗真はというとだ。

 たった一言「あー、まあ自分でどうにかするだろ」と呟くと興味なさそうに新聞を読み始めたそうだ。

 この話を金川に聞いた時、『叡智の女神ソフィアデア』に移籍してやろうかと思ったのは言うまでもない。


 あの野郎……少しは心配しろよ、とも思ったがあいつに心配されても気味が悪いのでまあ今はこのギルドでいいかと思い止まった。


 金川はというとダンジョンで連れ去られて『叡智の女神ソフィアデア』に向かった後、あっさり解放されたらしい。

 どうにも金川の誘拐は完全にあの3人の独断で追放された逆恨みだったそうだ。

 そんなのに巻き込まれるとは迷惑な話だ。


 事件以降、念の為に暫くの間は金川の周囲を警戒して最低限しかダンジョンに潜らないようにしていた。

 だけど結局、この間の連中みたいなのが来る事はなく近々下層にも挑戦する予定だ。



 そういえば、あの片桐叡山が気になって調べてみたが『叡智の女神ソフィアデア』は結構有名なギルドだった。

 全ギルド中、入団したいギルドランキングでTOP10に入る人気で今一番勢いのあるギルドらしい。

 マスターを勤める片桐叡山は25歳という若さでこのギルドを纏めている事から注目を集めているとの事だ。

 俺とは大違い過ぎて別世界の人間に思える。


 ちなみに俺がそんな大手ギルドである『叡智の女神ソフィアデア』を知らなかった理由としては、単純に俺がギルドを探している頃はそんな名前のギルドが存在していなかったから。

 もう少し周りの事も勉強しなきゃいけないなと改めて感じた。


 さて、そんなこんなで今日も今日とて俺たちはダンジョンに向かう予定だ。

 2人でのダンジョン攻略にも慣れて来たし、いい感じに連携も取れてると思う。

 ランク2にもなったことだし、5階層に行ってみるのもいいかも知れない。


 ギルドの扉を開くと中には既に金川の姿があった。斗真はいつも通り新聞を読みながらカウンターで怠けている。


 俺はそんな斗真をスルーして金川の元に行くと彼女に声をかけた。


「今日も行くか。」


「そうね。足引っ張らないでよ。」

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