GLOBEのおまけ

@28ki283

GLOBE ダイジェスト

phase01 ペンチ大好き!


深夜の新宿地下道に現れたペンチを持った怪人ペンちゃん。

終電を逃し途方に暮れていたバイトはかの狂人の餌食となる。

一方的に爪を剥がれ、理不尽な持論で生き方を詰められるバイト。

あわや手足二十枚全ての爪を剥がされるというところで、殴り込んできた乱入者により辛くも窮地を脱する。


ティーエーと名乗ったスーツ姿の彼(あるいは彼女)に手をひかれ、深夜の地下道を遁走するもなぜか一向に駅にたどり着かない。

覚悟を決めた二人はペンちゃんとの対決を覚悟するも、徐々に追い詰められていく。

ティーエーは自らの目論見を果たすため、いわくつきの鉄環をバイトに託す。

いわくつきにこびりついた武人の絶望と、将来が見えず鬱屈した自分が重なり合ったことで、バイトはトランスと呼称される特殊な心身状態に変性する。

肉体と精神のリミッターが解除された状態で、バイトはこれまで蓄積してきた不平不満を暴力という形で発散させる。

あと一歩というところでトランスが解除されるも、ペンチを奪い取ったティーエーの一撃により狂人ペンちゃんは自らの獲物で斃れるのであった。


いわくつきとの強い因果関係によって、机の上の地球儀の新たな選別者となったバイトは白い閃光に飲み込まれる。


全ては一睡の夢のように掻き消えた。


咄嗟に取り出したスマートフォン、画面の時計は午前零時過ぎを示す。

まだ終電に間に合う時間であった。


phase02 きょうのわんこ


八王子にあるラブホテル廃墟。

机の上の地球儀を管理運航する謎の組織デスクワークスの執行役ダスターはひとりの男(あるいは女)を追っていた。

イヌという名で呼ばれるこの男(あるいは女)は、デスクワークスの局員を少なくとも三名以上殺害していた。

殺された三人の無念を晴らすべく、上層部からの命令を待たぬ単独・無許可での追跡であった。


ダスターの武技を盗み見て、イヌは闘争による成長の喜びを覚えてゆく。


戦いの果てにダスターは頚部に重傷を負う。

死闘の決着間近に突如として横槍が入れられる。


闖入者の名はザクロ。デスクワークスの殲滅を目的とする最も危険なターミネーターであった。


自らの手でダスターを屠るため、ザクロはイヌへ撤退を命ずる。

招かれざる客を追い払おうと牙を剥くもイヌは敢えなく失神させられる。


出血量を鑑み、死を覚悟したダスターは自らのいわくつきを以てトランスを敢行。

死の確約と引き換えに変性状態に至り、標的をザクロへと移す。


命を懸けた猛攻もザクロの鉄壁を崩すことはあたわず、敗北を悟ったダスターは戦略を変更。

ブラフをかけてザクロの両目を潰し弱体化を図り、後を仲間たちに託した。


打ちのめされ、腕を折られても立ちあがるイヌの渇望をかぎとったザクロはイヌを共連れに引き入れようとする。

さらなる闘争というエサに釣られたイヌはこれを受諾。

死にゆくダスターに別れの言葉を残し、ザクロとともに闇へ消えた。


phase03 オー!フーコン


デスクワークス本部にて事前通達なしの人事異動が行われた。

執行役であるマンティスの罷免。後任として、新人局員ハイガンの登用。

差配を振るったのは事務局長のフーコンである。


局長不在の緊急時における人事であることと、後任のハイガンの能力不足を理由に

マンティスはこの人事に不服を訴えるも取り付く島もない。


傍若無人なフーコンの振る舞いに堪忍袋の尾が切れたマンティスは、私利私欲に侵された現デスクワークスへの敵対を表明する。


デスクワークスへの敵対勢力であるエフシーに認定されたマンティスを排除すべく、功利心と私情半々にハイガンはマンティスに剣を向ける。


威勢よく挑んだハイガンであったが、かつての師であるマンティスに一方的に叩き伏せられ実力差を証明する形に終わる。


武器とプライドを砕かれたハイガンはフーコンへの忠誠と引き換えに自身への支援を要求。

劣等感に押しつぶされるハイガンを見て、フーコンの高笑いが部屋中に響き渡った。


phase04 燃えよ麻婆豆腐


新宿での一件以来、いわくつきに取り憑かれてしまったバイトはひょんなことから仕事先の店長を殴り飛ばしてしまう。

行くあてもなく彷徨う彷徨う彼(あるいは彼女)に運命が鼻先を向ける。


たどりついたのは五反田の裏路地にある町中華。

現れたのは麻婆豆腐に圧倒的な自信を持つタイショーと、フザけたメガネをかけた浪人生のベンゾ。

怪人ペンちゃんを知る二人の目的はいわくつきの回収であった。


捨てても捨てても手元に戻ってくるバイトのいわくつきを預かったタイショーは、バイトを守り育てるべく、店への住み込みを提案する。

いずれ降りかかる世界中の愛と憎悪を乗り越えるため、バイトの修行の日々が始まった。


phase05 世界の終わりは


新宿の地下道で敗北を喫した怪人ペンちゃんは深夜の公園で目を醒ました。

横には赤いギターをつまびく男(あるいは女)の姿。名をミッシェルと名乗った。


ほどなくして命よりも大事なペンチがないことに気づき、狂乱するペンちゃん。

真夜中の騒がしい二人にデスクワークス執行役のセヌが接触する。


セヌの目的はミッシェルの身柄の確保。

「世界をぶっ壊す」と宣う彼(あるいは彼女)が、他のエフシーの旗手になることを危惧していた。


ペンチを失ったペンちゃんは我も失い、横合いから出てきたセヌを痛めつけるが

首を折られ公園のベンチで殴りつけられてもセヌは息の根を止めない。


言動の端々からセヌの孤独を感じ取ったミッシェルは彼(あるいは彼女)を仕留めずに勝負を持ち越す。

毒気を抜かれたセヌは静かに去り、おかしな二人は空腹を満たすべく、夜明けの街に繰り出した。


phase06 仁義なき血と骨


古い廃車の上で暇を持て余す金髪碧眼の少年(あるいは少女)。

彼(あるいは彼女)こそがデスクワークス局長の魂を転写された『机の上の地球儀』である。

地球儀の元にありったけのいわくつきを集めてティーエーが馳せ参じる。

二人は結託し、デスクワークス再編のために秘密裏に活動を続けていた。


いわくつきと一緒に連れてきてしまったのは日本最大の反社会勢力を破門された元極道のヤッパ。

いわくつきの日本刀を与え、刀に宿るいわくを育てようとしたティーエーの目論見を地球儀は叱責する。


妖刀が放つ怨恨に魅入られ、自らの出自も寄る辺も斬り捨てたヤッパは人心を失い剣鬼と成り果てる。

ヤッパを退場させるべく地球儀はいくつかのいわくつきを『食って』かつての姿に戻るのであった。


phase07 傘のない夜の雨


フーコンにイヌの討伐を命じられたハイガンは真夜中の教会でついにその尻尾を掴んだ。

真っ向から勝負を挑むも力量の差は大きく、一方的に地を舐めさせられるハイガン。

窮地に助け船を出したのはデスクワークスを追われたマンティスであった。


彼(あるいは彼女)はフーコンの動向を予測し、密かにハイガンの後を追っていた。


マンティスのただならぬ器量を嗅ぎとったイヌは、ハイガンの腕を引きちぎって追い出し、マンティスとの対決を所望する。


後を引き受けたマンティスはイヌを確実に追い詰めるも、指示に背いて教会に戻ってきたハイガンに気を逸らされ、その隙に致命の一撃を見舞われる。


ハイガンを逃し、イヌを仕留めるために、マンティスは建物ごとの自爆を敢行する。


天井の巨大なステンドグラスが瓦解し、あたりは静けさに包まれる。

残骸の中に残されたのはマンティスの亡骸ただひとつ。

ハイガンの長い慟哭が夜に響き渡った。


phase08 じゃあまた明日


出前から戻ったバイトはいつものようにベンゾとテレビゲームに興じていた。

苦しくも楽しい時間が二人の間に確かな友情を育んでいた。


にわかに異変を察知したベンゾは、バイトを店の奥の倉庫に匿う。

ベンゾの持ついわくつきの義眼『天地半眼』を自らの新たな目とするため、光を失ったザクロが店を強襲した。


八浪の浪人生を装っていたベンゾだが、隠していた武人としての渇望に呑まれ、ザクロと対決する。

渾身の秘技を真っ向から受け切られたベンゾは敗北を受け入れ、バイトの無事を条件に、いわくつきである自らの眼を命ごとザクロに差し出す。


ザクロとベンゾは店を去った。

古き友にも、新たな友にも、別れの言葉をかけることはなかった。


phase09 走馬灯裂く虚実


真夜中のビルの屋上で、タイショーはいわくつきを密売するヤクのディーラー・サイケと接触する。

今回の商品は『妖精の粉』と称される怪しげな結晶。

その実態は、覚醒剤でも違法薬物でもなく、物質化されたデスクワークス局員の魂であった。


仲間たちの魂の残骸を奪還すべく取引現場をセヌが襲撃する。


怒りに駆られたセヌはサイケから強奪を試みるも、サイケの術中に嵌り、過去のトラウマの中に囚われる。


取引を邪魔された怒りから、サイケはセヌを完全な廃人にしようと歩み寄る。

しかし悪夢に慣れていたセヌは自力で幻覚を脱し、サイケをビルの屋上から飛び降りさせ死亡させる。


続き、目撃者であるタイショーを排除すべく攻撃をしかけるも、造作もなく捌かれ一方的に投げ飛ばされる。

その術には覚えがある。彼(あるいは彼女)の正体に気づくも、かつての名を呼ぶ間もなく、一撃のもとに決着はついた。


phase10 手を取り合って


地球儀は都心にある寺を隠れ家としていた。


寺に張られた結界を破ってミッシェルとペンちゃんが現れる。


既に地球儀が体内に取り込んだペンチに引き寄せられてのことであった。


ペンちゃんが既にペンチに宿るいわくに侵食されていることに気づいた地球儀は、再三忠告を繰り返す。

地球儀の忠告も虚しく、ついにペンチを取り戻したペンちゃんは、いわくの臨界を迎えて怪物へと変貌する。


かつての友はもう元に戻ることはない。

ミッシェルの覚悟を見届けた地球儀は、残虐を体現するだけの怪物となったペンちゃんを退場させる。


その最中に、ミッシェルの人柄と目的、いわくつきの赤いギターの能力を勘案した地球儀は彼(あるいは彼女)に共闘を申し出る。

この世界を退場した友との再会を願い、ミッシェルは誘いに乗った。


phase11 赤と黒の先に白


マンティスとの死闘によって瀕死の重傷を負ったイヌは、ザクロによって身柄を古い隧道の奥に運ばれた。

ベンゾから全てを見通す義眼を受け取ったザクロは、イヌを追って『赤黒い何か』が迫ってきていることを感じ取る。


愛と憎悪を奪われたハイガンは、片腕をなくし、折れたままの青龍刀を握りしめてイヌの全てを塗り潰そうとする。

イヌは、何もかも無くなった者だけが持つ怖気立つほどの昏さに歓喜し、畏怖した。


重傷を負ったままのイヌとハイガンは、お互いを削り合うようにして戦う。

勝利も敗北も二の次に、師の仇を討つべく、ハイガンは折れた刀を自分の首筋に押し当てて躊躇いなく引き斬る。


マンティスの血肉を食い、自分自身を生きた『いわくつき』に変質させていたハイガンは、自信の死を以てマンティスの魂を再生させる。


肉体と魂の境界をなくした二人の手によって、ついにイヌは敗北する。


全てを見届けたザクロが去り、ハイガンもイヌもマンティスも、みな隧道の露と消えた。


phase12 何もかも薄れろ


深夜のパーキングエリアに置き去りにされたバイトは、たまたま通りがかかったミッシェルに助けを求めた。


身の上話から、友達を失ったという共通点が二人の距離感を縮める。


朝の海を見に行こうと決めた二人の元にセヌが現れ、デスクワークスの壊滅を告げる。

組織と目的を失ったセヌはわだかまりをなくすためにミッシェルとの戦いを希望する。


既に赤いギターを地球儀に預けていたミッシェルはこれを拒否。

代わりに、バイトとセヌ双方に捨ておけぬ因縁があることを見抜いた彼(あるいは彼女)は、セヌの相手にバイトを代打指名する。


バイトに敗北したセヌは背負い込んでいたものを振り切り、自らの意思で成すべきことを成すために、デスクワークス本部跡へと向かった。


phase13 天国と地獄の間


デスクワークスを崩壊させたフーコンを始末するべく、セヌは単身で本部に出向くも

デスクワークス全局員の魂と引き換えに肉体を取り戻したフーコンによって殺害され、殉職する。


全てのいわくつきをミッシェルの赤いギターに封じ込めた地球儀は、ティーエーとともにフーコンの元に現れる。


フーコンの願いは机の上の地球儀を回してデスクワークス局長アートともう一度戦うことであった。

しかし、淡い恋心のような彼(あるいは彼女)の野望は叶うことはなかった。


地球儀を回すために必要な、愛と憎悪を具現化した数多のいわくつきは、赤いギターの中に飲み込まれてもうこの世には存在しない。


絶望と悲嘆に暮れたフーコンは地球儀の首を刎ね、ついでティーエーを殺害。

少年(あるいは少女)の頭は、瞬く間に色褪せた小さな地球儀に変わった。


phase14 さらば、ギース


忽然と姿を消したタイショーから突然の連絡がバイトの元に届く。

指定された場所は真夜中の五反田駅車両基地。

長い髪を切り落としたタイショーは、伏せていた正体をバイトに明かす。


デスクワークス元代表執行役ギースの目的は宿敵ザクロの殺害。

二人はザクロと接戦を繰り広げるも、ついにザクロが斃れることはなかった。


猛攻を受け切ったザクロだったが、勝利を目前に突如として内部崩壊を引き起こす。

ベンゾから受け継いだ義眼『天地半眼』が、ベンゾの残滓によって脳へと侵食したためである。


負けを認められないザクロは、敗北から逃れるために自らの頭を握りつぶして死を選ぶ。


「独りよがりのバカタレをシバいて、机の上の地球儀を回せ」


タイショーはバイトに最後の仕事を託し、静かに息を引き取った。


phase15 机の上の地球儀


地球儀とタイショーの遺志を受け継ぎ、ミッシェルとバイトはデスクワークス本部で再会した。

奇しくも同じ願いを託された二人は放心するフーコンの待つ部屋の扉を開く。


いわくつきを溜め込んだ赤いギターを叩き折り、空っぽで誰もいなくなってしまったフーコンの世界に愛と憎悪を撒き散らすミッシェル。


嬉しさと寂しさで窒息するほどに満たされ、ずっと屈折させていた感情をバイトにぶつけようとするフーコン。


「どいつもこいつも馬鹿野郎が!」 ただ一人残されたバイトの怒鳴り声が響く。


愛と憎悪の反作用によりミッシェルとフーコンは急激に朽ち果て、肉体はガラスのように砕けて砂と消えた。


色褪せた小さな地球儀が色彩を取り戻し心臓のように脈打つ。


「机の上の地球儀を回せ」


バイトは誰もいなくなったこの世界を否定し、世界を回し新しめることを拒絶する。


もう一回、もう一回と、愛と憎悪を込めて机から転がり落ちた地球儀を蹴り飛ばす。


白い閃光に包まれて、舞台は再び新宿の地下道へと戻る。


目の前にはペンチを持った怪人がいて、聞いたことのあるセリフを吐く。

今度は爪を剥がれるより早く、バイトがそいつの顔をブン殴った。

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