第13話 ゴゼン会議
話をする上でこれからの目的を確認する。
大きく2つ。
1.爆発四散した体の再生。
2.魂の分離。
まず、一つ目は可能。
「少し時間はかかるが、主の体は元通りにできる」
指を一本立てて、神様が話を進める。
神のもたらす奇跡の力。【
「凄いな。じゃあ、昔は怪我したり亡くなった人も、奇跡のパワーで治癒してあげたりしてたのか?」
そりゃすげー崇拝されてたんじゃ。
「んなこたできん。魂の籠もった生物の身体を、直にどうこうするなど到底無理な話じゃ。これはあくまで、主の魂が抜けておるから出来る事じゃ」
あまり凄くなかった。
2つ目は、もう原因からして不明。
「そもそもが、魂の同化など
よっぽど波長が有ったのか、神の力が弱まっていたせいか、一対一という関係性の近さのせいだったのか。
不確定要素が多く、ハッキリとした答えは出せないが『おそらく、分離は可能なんじゃないかなー』 との見解だ。
「さきほど勢い引き剥がしたため、大まかには分かれてはおるのじゃが、魂の端の方が絡み合っとる状態じゃ」
胸の前で一拍、ぱむっと手を合わせると、水を掬うような形にその両手を開く。
その動きに曳かれ、神様の胸元から、薄明かりを放つ太陽のような球体が登った。
球体の表面はゆらゆらとほんのり、金色の光りを放ちながら揺らめいている。まさにお天道様を取り巻く炎のように。
「おお……きれいだなぁ」
ポロリとこぼれた正直な感想に、神様の動きが固まる。逆に太陽を覆うプロミネンスの揺らぎは活発になった。
「んんっ、で、じゃ。これは我神の魂を形象化した物じゃが、主の体から細い紐が伸びておるじゃろ?」
「えぇと?」
よくよく目を凝らすと、この仄明るい室内では見えづらい灰色の光が、俺の胸元から神様の魂へ向かい何本も伸びていた。
何やらこちらの色はいまいちパッとしないなー。
「このあたりじゃ」指先で球体の正面部分をつつく「絡み合っておる感じじゃろ?」
太陽に向かうネズミの尻尾は、接合する部分でごちゃっと絡まった糸団子になっている。
「おそらく、時間をかければ解けるはずじゃが」
「鞄の中のイヤホン状態だな」
ワイヤレス全盛期の今となっては失われつつ有る懐かしい光景か。この短い時代にだけ起こり得た文化遺産かも知れない。
分離問題に関してまとめると、あくまで絡みあっているだけで、その糸を解くのに時間を要する。
原因に関しては、話し合っても答えが出ないので、経過観察。と言うことだな。
ちなみに爆発四散の方の原因は、本来は入ってはいけない人体へと神の力が流れ込んだ影響との予想。
魂が一度合体した事により、人へと半端に適合する状態になった。それを無理やり詰め込んだせいで、溢れ出る神の威光が内側から炸裂ボンバーウェイ、と。
「中間宿主を通して侵入するウィルス見たいだな」と言ったら引っ叩かれた。
「目標は、確認できた。が」
それに立ちはだかる、大きな問題が1つ。
何は無くとも必要なものが、神様のエネルギー。信望者から得られるパワー、【
「じゅう……っ」
「恐らく、その程度はかかろう。なにせ溜める源がお主しかおらぬのじゃからな」
神様から告げられた充電期間を聞いて、二の句を飲み込んだ。
「十年……かぁ」
絶妙に長い。
ちょっとした不法侵入の罰にしては、懲役期間が長すぎる。
「それも『短くて』、じゃ。他の問題が出てこれば、期間はさらに伸びるであろう」
「模範囚で過ごさなくちゃな。それにしたって社会復帰する頃には、戸籍が無くなってるか」
「それは案ずるな。十年はあくまで魂が体験する
「それはまた、上手い事出来てるもんだ」
「上手いかどうかは分からぬが……」
十分に美味しい話しだろうさ。
「お主も、そこそこいい年であろ?」
お? なんだ突然のケンカか?
なんて微妙に棘のある言葉に聞こえるのは、現状に何らかの不満が有るからだろう。いましめ。
「意識や魂は、時間を歪められるが、器である体はそうはいかぬ。長年を共にしてきた『体の縛り』というのはなかなかに強固なものじゃ」
「なるほど、そういうものか」
「それにしても、どこもかしこもエネルギー問題だぁね」
「麓も揉めておるのか?」
すっかり長丁場になる雰囲気なので、フタリ共足を崩すところから始まり、ついには横になって肘をつきながら話をしていた。
この場を包むゆるい空気は、
それにしたってリラックスしすぎだ。合体の原因で言ってた『波長が合っている』という説の信憑性も
神様も流石にだらけ過ぎたと思ったのか、ヨイショと体制を戻し、床についていた肘をさすさす撫でる。
「コーヒー飲むか?」
「いただきます」
ここらでひとつ饅頭が怖くなってきた。
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